2005年06月24日発行892号

【イラク女性は自由を求める / 政教分離政府の実現を】

 前号に続き、イラク女性自由協会(OWFI)のエルハム・アブドゥルスタルさんの活動を紹介する。(豊田 護)

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 「グッサ・グッサというのは額と額をつき合わせるという意味のアラビア語ですが、女性にとってはつらい意味を持ちます」

 アルビルのシェルターに保護された女性の典型的な事例としてエルハムさんが紹介してくれたものだ。

 「例えば、あなたがわが家の女性と結婚するとしたら、あなたの家の姉妹のうち一人を私の家に嫁がせなければならなりません。そんな古い因習のことを言います」

 部族社会の「伝統」のようでもある。たとえ女性が幼く、適齢期になるまで10年かかったとしても、約束を守らなければならない。

 「いまシェルターには、知らない間に決まっていた結婚を嫌って家を出てきた女性が保護されています。逆らえばひどい目に遭わされるからです」

 アルビルにシェルターができて1年足らず。公然化していないが、すでに20ものケースを扱った。

 「別の事例は、ボーイフレンドができた14歳の少女です。親は交際を認めず、罰を受けるのが怖くて逃げてきました。ボーイフレンドと別れることを約束して家に帰ることになりました」

 解決になったのかどうかはわからない。少なくとも、あからさまな虐待行為を防ぐことはできた。

「名誉の殺人」とは

 女性差別の典型ともいえる”名誉の殺人”は、1990年に「合法化」されて以降5千件にも上るとエルハムさんは、報告した。

 婚前交渉などが親の知るところとなれば、家の恥として、女性は身内の手によって殺される。”名誉を守るため”を理由にしたこの殺人行為が罪に問われないのだ。その上、証拠もないまま親が一方的に”不貞な行為”と決め付けて、殺害にいたるケースさえあるという。

 エルハムさんはシェルターに毎日通い、こうした女性の悲痛体験に耳を傾ける。つらい話ばかりだが、自ら受けた差別体験が、今の活動を支えている。そんな女性たちの声になりたいと思っている。

 しかし意外にも、「クルド地域は、他の地域に比べ政教分離の政策が受け入れやすい背景がある」とエルハムさんは言う。それは、家族や親戚の中に1人や2人は必ず、欧米やクルディスタン以外の地域に居住する人がいるからだという。

 伝統的な部族社会のルールとは違った考え方に触れる機会が多くある。音楽やファッションなど他文化流入はイラクの他の地域に比べ進んでいた。1991年からの自治区の運営が、地域に安定をもたらしてきたことが背景になっている。

 政教分離の政府をめざすイラク自由会議(IFC)にとって、クルド地域での影響力をいかに拡大していくかが大きな鍵でもある。その中心を担うイラク女性自由協会のアルビル支部は多くの支持者を獲得しているが、10人足らずのメンバーで日常の活動を支えている。シェルターの数もまだまだ足りない。

 「一番上の娘も私の活動を支持してくれてます。大きくなったらきっと私と同じことをすることでしょう」。エルハムさんは、にっこり笑った。          (終)

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