2005年09月02日発行901号

【戦後60年「小泉談話」 / 実際の行動は戦争準備 / 口先だけの「反省・おわび」】

 8月15日、政府は戦後60年の小泉純一郎首相談話を決定し、公表した。「植民地支配と侵略」に対する「痛切な反省と心からのおわび」を盛り込んだこの談話を日本のマスメディアは高く評価している。だが、アジアの民衆は小泉談話に懐疑的な反応を示している。なぜなら、最近の日本の動きは明らかに「次の戦争」の準備に入っているからだ。

アジアの冷めた反応

 今回の小泉首相談話について、政府は「過去を直視し、未来の平和と繁栄に尽くす政府の基本方針」(8/16読売)としている。

「靖国参拝撤回」を求める人々(8月15日・東京)
写真:参拝に反対する市民のデモ行進

 確かに、小泉談話は「我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた」と認めている。そのうえで「歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明する」と述べている。

 戦後50年の村山首相談話にはあった「国策を誤り」の文言はなくなったが、表現上は従来の政府見解を踏襲した内容と言えよう。

 この小泉談話を日本の新聞各紙は一様に高く評価した。「賛成である」と支持を鮮明に打ち出し、「首相談話を生かしたい」(8/16社説)という朝日新聞。毎日新聞は「反省の気持ちは伝わってくる」(同・社説)と、賛同の意を示している。

 しかし小泉談話の受けがいいのは日本国内に限った話である。肝心の中国や韓国は冷めた反応を示している。「日本政府及び指導者は、立場や約束を実際の行動で示してほしい」(中国外交部報道官)、「日本は一体なぜ、アジアの人の心にまったく響かない『反省談話』を60年間くり返しているのだろうか」(8/16朝鮮日報)等々。

 要するに、日本政府の実際の行動を見ていると、侵略戦争への反省や戦争被害者に対する「おわび」の念があるとは思えない、というわけだ。

靖国参拝の意味

 事実、ここ最近の日本国内の動向を見ただけでも、小泉談話が口先三寸の空文句でしかないことがはっきりする。端的な例が靖国問題だ。8月15日、午前の閣議で小泉談話の決定に参加した2閣僚が靖国神社に参拝した。小泉自身、8月15日の参拝は見送ったものの、靖国神社参拝そのものを撤回したわけではない。

 「戦争の反省と靖国神社参拝は対立しない」と小泉は言うかもしれない。もちろん、これは詭弁である。靖国神社は戦没者の追悼施設ではない。戦死した者に国家的栄誉を与えることによって、国民を精神面から戦争に動員していくための儀礼装置なのだ。

今も軍国主義を鼓吹する靖国神社の展示物
写真:ゼロ戦などの兵器を展示する靖国神社

 これは決して過去の話ではない。戦争勢力が靖国神社をどう位置づけているかを、明快に語った発言がある。小泉首相に8月15日参拝を求める集会(7/7)で、民主党の西村真悟はこう語った。

 「靖国神社で不戦の誓いをしてはならない。近い将来、わが国が戦争を受けて立たなければならないこともありうる。場所は東シナ海、台湾海峡だ。その時は勝たねばならず、靖国に参拝することによって、今度戦争するときは断じて負けないという誓いを新たにしないといけない」

 靖国神社が戦争遂行のための軍事施設であることが露骨に語られている。小泉がどう弁解しようが、首相が公的な立場で靖国神社に参拝することは、靖国神社の今日的復権、すなわち戦争準備を意味しているのである。

戦争路線に審判を

 自身の談話の意義について、小泉首相は「二度と戦争をしてはいけない。戦後60年間の日本の歩んだ道というのは、戦争の反省、教訓から歩んできた道でもある」と語った。それならば、戦争の反省を具体的にあらわした日本国憲法を投げ捨てようとしていることを何と説明するのか。

 8月1日、小泉が総裁をつとめる自民党は新憲法草案の条例案を公表した。条例案は現行9条から「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を削り、新たに「自衛軍」の保持を明記している。海外での武力行使や集団的自衛権の行使もできるとした。

 また、防衛庁が次年度予算の概算要求に空中給油機能を持った輸送機の導入を盛り込む方針を固めるなど、自衛隊の装備面でも侵略軍化が進んでいる。

 このように戦争準備を進めながら、口では戦争の反省を語る小泉首相の厚顔ぶりに、アジア諸国民衆は不信感を募らせている。小泉談話は「ともに手を携えてこの地域の平和を維持し、発展をめざす」としているが、現実の小泉政治はアジアにおける孤立の道を進んでいる。

 小泉首相が8月15日の靖国参拝を見送ったのは、9月の衆院選挙への悪影響を恐れたからだ。今度の選挙を小泉はあくまでも「郵政選挙」で押し切ろうとしている。ごまかされてはならない。総選挙の真の焦点は、小泉内閣が進めてきた戦争国家路線への審判である。      (M)

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