2005年09月09日発行902号
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【めざせ無防備条例 連続する直接請求運動】

 いかに政府が息の根を止めようとしても、無防備地域宣言運動はとどまることなく全国に広がっている。この秋は、9月16日の滋賀県大津市を皮切りに全国のどこかで直接請求署名運動が展開される状況が生まれる。


9月16日から署名開始―秋のトップを切る滋賀・大津市

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 関西では滋賀県大津市・大阪府高槻市・奈良市など、無防備条例の直接請求署名に向けた動きが続々と始まっている。

 9月16日の署名開始まであと1か月を切った滋賀県大津市。無防備地域宣言をめざす大津市民の会は、8月21日に「平和無防備条例を実現するつどい」を開き、戦争のない未来を子どもたちに、と呼びかけた。

 あいさつに立ったのは、共同代表の川端諭さん(元日本基督教団堅田教会牧師)。「私たちは戦争反対、自衛隊のイラク派兵反対を呼びかけて20回ピースウォークを続けきた。無防備地域宣言の講演を聴き、未来に向けて私たちはどうすべきなのかと感銘を受けた。ジュネーブ条約第1追加議定書は民衆優先の立場を掲げた。一人ひとりの署名が議会を動かし、破壊でなく創造的な役割を担うものだ」と署名行動の先進的な意義を強調した。

「授業で知った」

 事務局は、大津市長が「つくる会」教科書を賛美したこと、8月6日には政府主催の国民保護フォーラムが開かれ自衛隊との連携による戦時訓練が宣伝されたことなど、足もとで進む戦争国家の動きに警鐘を鳴らした。無防備全国ネットの矢野秀喜さんは全国・世界に広がる無防備地域宣言運動を紹介し、「これまでの議会論議は文民保護を規定した条約の意義を否定している。軍隊優先の旧軍思想だ」と批判した。

 参加者からは期待の声が次々に。大学生の男性は「条約を大学の授業で知り、署名行動の動きを新聞で知った。大学や駅で「大津市民の知り合いはいませんか」と呼びかけてまわった」と発言した。大津市会議員の岡田啓子さんは「友人が大阪で取り組んでいたことを聞いて参加した。全議員に署名行動について周知徹底を」。請求代表予定者の一人、西谷靖夫さんは「戦争は人殺しだ。それに関わらない、はっきり拒否しようと署名を通じて訴えたい」と呼びかけた。

 最後に共同代表の日本基督教団膳所(ぜぜ)教会大山修司牧師が「平和への議論を市内各地で広げよう」と激励した。

 有権者数24万人の大津市では条例直接請求の法定署名数が4800筆、同会ではその4倍、2万筆獲得をめざす。開始までに市内10か所で地域の集いを開き、市民に広く宣伝する。9月16日(金)午前10時から市役所本館前で「出発のつどい」を開き、にぎやかに署名行動をスタートさせる。

国民保護法の対案はこの運動―東京・品川区、千葉・市川市で学習会

田中隆弁護士を招いた学習会(8月22日・品川区)
写真:田中隆弁護士を招いた学習会(8月22日・品川区)

 国民保護法制に対抗して新たな無防備地域宣言運動が次々に生まれている。

 首都圏では8月22日東京・品川区で、24日には千葉県市川市で、ともに国民保護法制に詳しい田中隆弁護士を招いて学習会が開催された。

 品川無防備平和条例の会(準備会)が開いた集会には約50人が参加した。会の呼びかけ人代表の山本佳子さんは「運動の始まりを前にこれほど参加していただいたのは力強い。皆さんとともに平和な品川を実現したい」とあいさつ。

 参加者からは「イラクのことを考えるたびに平和を作り出さねば、と感じる。自治体が無防備を宣言することは私たちの力で十分実現できる。宣言を出発点に世界のどこの自治体ともつながり、じかに手をつないでいける」(九条の会・品川)など、地域から平和を作り出そうとの意欲が語られる。

 田中弁護士は鳥取県での保護計画の内容を紹介し、それが市民の平和といかに隔たったものであるかを語った。「60万の県民を幹線道路を通って山越えで避難させる計画を検討した。これ自体無謀だが、自衛隊は計画に対して、道路は自衛隊が優先して使う、と真っ向から否定した」。さらに、数万人の県民を避難させるのにすら何週間もかかるという試算を例に挙げて「東京都民1400万人を避難させるなどというのは全く非現実的だ」と今後予想される東京都の計画の非現実さを批判した。

 そして、国民保護計画の狙いについて「ありえない有事をかざして不安を煽り『戦時を支える銃後の社会』を作ろうとするものだ」と指摘した。

品川は10月下旬から

 現在、計画立案に困った自治体側からは「事態の想定を示してほしい」といった要望が国に寄せられている。これに対して国は「よりよいものを作るために論議を」と説得している。こうした動きについて田中弁護士は「これに乗っかってしまっては、戦時訓練へという発想にはまってしまう。国民保護計画そのものに対する明確な対案を示す必要がある」と無防備地域宣言運動に期待を寄せた。「非戦の町を広げる中で戦争政策そのものを包囲することが重要だ。国際法規に依拠した運動を世界の流れに連帯して進めることが大きな力になる」

 参加者からは「こんなずさんな計画に自分たちの安全をゆだねるわけにはいかない。無防備宣言を周りに広げたい」などと感想が上がっていた。

 品川では10月下旬から無防備平和条例制定への直接請求署名を開始する。9月19日には「無防備平和条例の会 スタートのつどい」と開く。

 市川市では24日を起点に学習会を重ねて来春の署名開始をめざす。

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