2005年10月28日発行909号

【小泉改革の正体−「自立支援」法 「金のない障害者は死ね」が本音】

 10月14日、参院本会議で障害者「自立支援」法案が可決された。

2年前の新制度を変更

多くの障害者の反対の声を無視した法案強行可決
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 この法案は、自立促進どころか、障害者の生活基盤を破壊し、障害者福祉を解体する。小泉改革の本質が端的に示されているものだ。多くの障害者団体は「私たちを抜きに私たちのことを決めるな」と抗議の声をあげ、10月11〜14日に国会前連続行動に取り組んだ。

 法案は、03年4月に導入された「支援費」制度を変更し、将来的な介護保険制度への吸収合併を狙ったものだ。

 「支援費」制度自体は、障害者福祉予算を削減するために、それまでの「措置」制度に代わって導入された。ところがこの制度の導入によって、これまで障害者のホームヘルプを実施していなかった市町村でも実施に踏み切るところが増え、ホームヘルプサービスの利用が急増。低めに設定していた初年度予算だけでなく、04年度も当初予算を170億円も上回る事態となり、最終的には市町村が欠損部分を負担することになった。

 そこで小泉内閣が打ち出したのが、さらなる制度「改革」としての、この「自立支援」法だ。

福祉を否定する「応益負担」

 新制度の最大の変更点は、「応益負担」原則の導入だ。

 障害を持って生まれたことや障害を持つようになったことは、本人の責任ではなく、障害者への介護や支援は本来社会的に保障されなければならない。障害者が介護サービスを受けることは、生きていくための、人間としての当然の社会的権利なのだ。

 ところが「応益負担」という考え方は、サービスを個人的「利益」ととらえ、受けた利益に応じて多くの負担をさせようというものだ。

 現行の「支援費」制度の下でも自己負担はあるが、それは所得に応じて一部自己負担する「応能負担」であり、大部分の障害者は無料でサービスを受けている。「応益負担」原則の導入は、額の問題にとどまらず、障害者福祉そのものを否定するものといわねばならない。

生活を破壊する自己負担

 新制度では、「応益負担」原則に基づいて原則1割の自己負担が導入される。また入所・通所施設の食費は全額自己負担となる。

 自己負担には、所得に応じて上限が設けられる。年収80万円未満なら月額1万5000円、年収80〜300万円なら2万4600円、年収300万円以上なら月額4万200円だ。

 だが、年金で生活をしている多くの障害者が受けとっているのは、障害基礎年金2級の月額6万6000円だ。この中から1万5000円も払えば、日々の生活が成り立たない。

 自己負担分を払えなければ、ホームヘルプや通所介助などのサービス利用をあきらめるしかなく、障害者は生活そのものが営めなくなる。自己負担は障害者の生活を破壊する。

個別審査で利用制限

 新制度の内容にもさまざまな問題がある。

 新制度では、審査会が介護保険の「要介護認定」と同様の方法で障害者の程度区分を決め、その区分によってサービスの内容や上限を決めることになる。その結果、現行制度の下で障害者が必要と感じ、利用しているサービスが受けられなくおそれがある。例えば、中軽度の障害では訓練給付が中心となり、介護給付が削られる。

 また、個別給付が国の義務的経費とされる一方で、国の事業が「重度訪問介護」と「行動援護」にしぼられ、国が示す「標準的な費用額」が上限となるため、事実上の利用制限につながる。

「弱肉強食」の小泉改革

 新制度では、支払能力のある者しかサービスを受けられない。「金のない障害者は死ね」と言っているのだ。まさに「弱肉強食」の論理を社会福祉の分野に持ち込み、改革の名で障害者福祉を解体する。これが民営化の論理であり、小泉改革の本質にほかならない。

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