イスタンブール綱領文書は、民衆法廷の目的を次のように示している。
・ イラクで何が起きたのかについての事実を確定し、平和に対する犯罪、戦争犯罪、さらに占領下での犯罪、この戦争の背後にある真の目的と世界平和に対するこの戦争言説の危険性を公衆に知らせること。
・ 平和運動と地球規模の反戦抗議行動の動員を継続・強化すること。当民衆法廷は、学問的な取り組みにとどまるのではなく、強力な国際的ネットワークによって支えられものとして意図されている。
・ この民衆法廷は継続する過程だとみなされうる。イラクで起きたことの調査は、絶え間ない歴史の書き変えに対して、真実を回復し集団的な記憶を保存するために第一義的に重要である。我々は国際機関の沈黙に挑み、それらに国際法の下で自らの義務を遂行させるよう圧力をかけようとしている。最近の過去を裁く時、我々の目的は、将来の違法な戦争を防止することである。この過程で、民衆法廷は国際法に関する勧告を出し、正義の概念と倫理的政治的自覚を拡大することができる。
・ 国際民衆法廷の提唱は、新たな帝国の世界秩序が、絶え間ない戦争をその主要な道具の一つとする永遠の「例外状態」として確立されるのを阻止するための、より広範な運動の一翼を担おうとする。この民衆法廷は、平和と正義の世界構築に貢献する道義的、政治的、そして法的な判決をもたらしうる。
民衆法廷の形態は次のように構想された。
「一般的な計画としては、関連行事、関連した調査団、調査委員会、各国での公聴会や特定の問題を法廷を伴う独立した世界民衆法廷を開催し、それらすべてがイスタンブールでの最終法廷に集約される。これまでのところ、ブリュッセルと広島で公聴会が開かれる。現時点で、公聴会開催地の他の提案には、ニューヨーク、コペンハーゲン、ミュンヘン、メキシコが含まれ、また、関連行事としてロンドンで「イラク侵略と軍事占領の法的調査」が、またムンバイで、「犯罪としての戦争世界法廷」が開かれる。日本各地及びアジア諸国での法廷と公聴会が準備されている日本のICTI(イラク国際戦犯民衆法廷)は、イラク世界民衆法廷のパートナーであり、その明らかにされた事実と成果の全てをもってイスタンブールでのWTI最終法廷に貢献する」
「これらの調査委員会は,民衆法廷総体に適用される(「憲章」で明文化される)包括概念に符合して運営されるが、各公聴会は、形式に関して一定の独立性も与えられる。イラクの事例にできるだけ多角的に接近することによって(国際法、地政学的・経済的分析…)、我々は免罪を止め、帝国の戦争に抵抗するという我々の共通の目的を強化する。こうして公聴会は相互に強め合い、明らかにされた事実はすべて、イスタンブールでの最終法廷に持ち込まれる」
そして、民衆法廷のスケジュールが示された。
「核となる公聴会は、2004年4月14日、ブリュッセルで始まり、イラク戦争2周年記念日となる2005年3月20日に開廷するイスタンブール最終法廷で終了する。これらに先立って、精力的な調査・連携・運動が行われるであろう。」
こうしてイラク世界民衆法廷が始動し、世界の反戦平和運動への呼びかけが始まった。イスタンブール事務局が管理するメーリングリストを通じて、世界的な広がりで民衆法廷が追及されることになった。
なお、実際には2003年12月にロンドン公聴会、2004年1月にムンバイ公聴会が開かれていた。また、イスタンブール法廷は実際には2005年6月に変更になった。