2006年03月03日発行925号

【在日米軍再編強化問い 岩国で住民投票を実施へ】

 在日米軍再編強化計画で厚木基地(神奈川県)機能移転先候補にされている山口県岩国市で、3月12日、移転への賛否を問う住民投票が実施される。米軍再編を焦点にした住民投票は全国で初めてだ。

基地被害の拡大招く再編

 発端は、日米軍事一体化を強く打ち出した日米安保協議委員会(2プラス2)の合意「日米同盟・未来のための変革と再編」(10/29)。同合意は、日本全国の在日米軍基地と米本土・アジアの米軍基地の機能を再編統合するとともに、自衛隊の再編強化を実施し、全世界を視野にいれた共同軍事作戦を一層円滑に展開しようというものだ。再編・移転案に対し、すべての移転先の首長は即座に「容認できない」との態度を表明しており、地方議会も次々反対の意見書を国に突きつけていた。

 岩国市へは、現在厚木基地に駐留している米空母艦載機の移転が強要される。移転予定の航空機は57〜58機で計130機ほどが常駐することとなり、100機が常駐する極東最大の米軍基地・嘉手納基地を上回る。しかも、大半がジェット機で騒音被害も深刻化する。

 日米合意が明らかにされた直後に、山口県知事・岩国市長・由宇町長が反対を表明、隣接する広島県知事も反対を表明し広島県内5市も反対の要望書を決議している。

民意無視の国・市議会

 岩国市長が「白紙撤回」を譲らない背景には、地元住民の反対世論の広がりがある。広島県西部5市町で構成する「岩国基地NLP(夜間離発着訓練)移転計画反対期成同盟」は計画撤回を求めた要望書に11万人分の署名を添えて、外務省・防衛庁に突きつけた。そして、基地移転に反対する市民団体が相次いで結成されている。岩国市長に対しても、市民の半数をこえる6万人分の反対署名が提出されている。

 中国新聞による地元住民への世論調査では、「厚木基地機能移転反対」が75・9%を占めている。理由は騒音被害の拡大と事故への不安だ。

 しかし、国は住民感情を逆なでする対応に終始している。昨年11月地元を訪れた額賀防衛庁長官は「日本全体の基地負担軽減と抑止力維持」という「国策」を押し付ける一方で「振興策」をエサに抱き込みを図った。戸田施設部長(防衛施設庁)に至っては「騒音が増す地域があっても、政府としては一切許されないとは考えていない」とまで言い放っている。要は「国策としての決定事項を通告する」という「理解の求め方」であり、住民無視もはなはだしい。

 民意を無視しようとしているのは国だけではない。

 岩国市長は、住民投票実施を発表した2月2日、その理由を「昨年6月に基地機能強化の反対を決議した市議会が、受け入れ前提の議論を始め、市の正式な判断が難しくなった」と説明。「民主主義の原点に戻り、市民の意思を確かめたい。投票結果は尊重する」と表明している。これに対し、市議会は「住民投票実施反対」を申し入れている。

 05年3月に公布され、同年10月に施行された「岩国市住民投票条例」は、「地方自治の本旨に基づき、市政運営上の重要事項について市民の意思を反映し市民の市政への参画を推進する」ことを目的とし、永住外国人にも投票権を認めるという積極的な条例だ。発議権は市長にも与えられている。自ら条例を審議し議決した市議会が住民投票に反対するのは、「基地機能強化反対決議」を覆したことと合わせ、市民に対する二重の背信行為だ。

住民の手に主権を

 読売新聞社説(2/7)は「在日米軍再編は国の安全保障の問題。『市の権限外』であり、住民投票の対象にならないと考えるのが筋」などと難癖をつける。だが前出の中国新聞世論調査では、「岩国市に何を求めるか」との問いに、「市民の多数意見を把握し、国に伝える」が38・2%を占め、「安全保障は国の専管事項であり、強い態度を示すべきではない」は7・5%に過ぎない(複数回答)。

 住民自身が、自らの意思に基づく政策決定を求めている。まさに、住民自治の実践だ。

 岩国市市民投票を実施させ、民意を反映させることは、「国防は政府の専管事項」とする国やそれに追随する首長たちにノーをつきつけ、住民の手に主権を取り戻すことにつながる。

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