2004年4月17日、ブラッセル法廷判事団(委員会)は法廷の結論(判決)を公表した。
判事団は、フランソワ・ウタ(三大陸センター事務局長)を長に、ピエール・クライン(リューベン大学教授)、ルード・アビヒト(著作家)、サミール・アミン(経済学者)、デニス・ハリディ(元国連イラク支援担当官)、サバハ・アルムフタル(アラブ民主法律家協会会長)、ナワル・エル・サダウィ(作家)である。ウタは、ラッセル法廷コペンハーゲン法廷に参加した経験をもち、イラク世界民衆法廷イスタンブール法廷の判事にもなった。ハリディは、ムンバイ法廷やイスタンブール法廷にも参加し、イラク国際戦犯民衆法廷にも証人として参加した。アルムフタルも、イラク国際戦犯民衆法廷の証人である。
判事団は次の結論に到達した。
第1に、「新しいアメリカの世紀プロジェクト(PNAC)」の主要な三要素は、新世紀にアメリカのヘゲモニーを確立すること、「パクス・アメリカーナ」を脅かす権力の出現を予防すること、アメリカの利害に対する脅威に先制的対応をすることである。
第2に、チェイニー、ラムズフェルド、ウォルフォヴィッツなどPNACの主要メンバーがブッシュ政権に入り政策を策定している。2002年のホワイト・ハウスの「国家安全保障戦略」はその好個の証拠であり、その帰結がイラク戦争であった。
第3に、イラク攻撃は侵略行為であり、国際法の重大な違反であり、国連憲章の諸原則の違反である。
第4に、イラク侵略により1万人以上の民間人が亡くなり、引き続く占領によって犠牲者が増え続けた。恣意的拘禁、虐待、基本的ニーズの剥奪などの人権侵害が続いている。イラクの「民主化」「自由」が語られるが、まったくの幻想である。
第5に、イラクに安定と平和をもたらすどころか、侵略と占領によって不安定と混乱がつくられた。イラク破壊は、パレスチナにおけるイスラエルの違法な活動にも影響を及ぼしている。世界を安全な場所にするといいながら、中東地域と西欧の人民の間に敵対関係を作り出している。
第6に、アメリカの一貫した戦略は軍事力による世界支配の確立であり、永久戦争状態をもたらそうとしている。PNACの政策は野蛮なユニラテラリズムであり、法の無視である。PNACの理論は「思想による犯罪」である。それは新保守主義と宗教的原理主義に支えられている。
第7に、イラクにおける抵抗運動の強まりによって米英は皮肉にも国連の関与を求めたが、国連は侵略と占領への加担を避けるべきである。国連は、全占領軍の撤退と、イラク人民の主権回復に協力するべきである。EUやNATOも占領協力を拒否するべきである。
最後に、ブラッセル法廷は世界の人民に呼びかける。自己の政府が占領軍に対して軍事的にも政治的にも財政的にも支援しないように要求すること。占領軍によるイラク経済の完全私有化に反対すること。法廷は、イラク人民への連帯を表明し、完全な主権回復の企図を支援する。