ロゴ:怒りから建設へロゴ 2006年05月05日発行934号

第16回『韓国軍駐留地に韓国携帯電話会社 / 経済権益求める占領国』


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 占領3年が経過したイラク。破壊された電気・水・ガスなどの社会サービスは改善される気配すらない。石油などの経済権益を狙ったグローバル資本とその代弁者たちは、「経済民営化」で作り出した市場をむさぼりあっている。電話事業もその一つだ。これまでの固定電話の復旧をなおざりにし、否応なく携帯電話に頼らざるを得なくしている。占領と経済権益は切っても切れない関係にある。(豊田 護)


復興ビジネスの陰であふれる失業者(アルビル)
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新たな市場作り

 「そっちじゃないよ。こっちの方角だ」

 街角に出て携帯電話をかけようとすると、通りかかる人たちが教えてくれる。南の空にアンテナを向けないと、通信衛星をとらえられない。これまで、イラクから日本への通信の手段として、スラーヤ衛星携帯電話を持っていった。赤道上の静止衛星を使った衛星電話は、日本にも米国にも届いた。イラクの人々もよく知っていた。

 2003年5月、戦争直後のイラクを北から南まで戦争被害の調査をした。アルビルに開設された救急病院に、爆撃で全身にガラスの破片が刺さった女性を訪ねたことがある。米国にいる親類に連絡がとりたいと頼まれ、スラーヤ電話を貸した。声だけでなく、イラクで出会った日本のマスコミ関係者はデータ通信にも利用していた。

 サダム政権は携帯電話サービスを禁止していた。固定電話は、旧式の機械で回線数も100人あたり3回線前後だったが、国営のイラク電信郵便公社が維持していた。電話局や通信施設は、湾岸戦争の時も、イラク戦争の時も、真っ先に破壊された。湾岸戦争の時は数か月で、ある程度復旧したが、今回は今なおほとんど手がつけられていない。

携帯電話ビジネス

 その一方で03年8月、当時の暫定統治機構(CPA)はいち早く携帯電話事業の入札を行った。民営化だ。その結果、北部をクルド系イラク企業アジア・セル、中部をエジプトのオラスコム・テレコム社、南部はクウェートのアシール・テル社が落札した。

 バグダッドを含む中部地域を手にしたのは、アラウィ元首相の親戚が経営している会社だった。いま「イラクナ」の名で営業をしているが、その中継局や交換設備を請け負ったのは、米国のモトローラ社だ。モトローラ社は、別途、米国防総省から占領軍に対する無線通信システムの構築を請け負っており、合わせて約6千万ドルの契約を手にしたことになる。

 この時、住友商事とNECが、モトローラ社から携帯電話通信設備の一部を受注しているのはよく知られている。

 昨年11月、クルド地方を訪れた時、携帯電話会社は新たに2つ増えていた。「サナ」と「コレク」。いずれも韓国企業だ。サナはクルド全域を、コレクはアルビルとダフークの2州を営業範囲としている。当初クルド地域をエリアとしていたアジア・セルは、スレイマニア州に限られたようだが、バグダッドを含む中部地域に範囲を広げた。首相の座を追いやられたアラウィより、新たに大統領になったタラバニにつながるクルド企業が優遇されたのかもしれない。

占領地域と権益

 携帯電話に加え、アルビルとスレイマニヤ間の道路改良工事を請け負っているのが、韓国企業だという。今アルビル州には3千人を越える韓国軍が駐留している。占領軍参加と復興ビジネス参加。あまりにも露骨な振る舞いだ。

 サマワに居座る自衛隊の場合はどうか。昨年12月、石油・天然ガス分野における日本・イラク間の共同声明が出された。設置される共同運営委員会は、ウルーム石油大臣と二階経済産業大臣が直接、運営にあたるほどの熱のいれようだ。他にも、イラクの重要港湾施設ウムカスルの整備事業、バグダッド郊外のアル・ムサイブ火力発電所改修などイラク南部を中心に総額750億円を越える円借款が決まっている。ひも付き援助となることは間違いない。

 戦闘開始前。03年2月17日付けニューヨークタイムズは「親米政府を樹立した場合、モトローラ社などの企業が再建を請け負える」と書いた。

 国民議会選挙・政府樹立のシナリオは、”イラク民主化”を描き出すことはできなかった。選挙後4か月にわたる”混乱”はむしろ、経済権益に群がる腐敗分子の醜さを際立たせている。 (続く)

 

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