2006年05月26日発行936号

【936号主張 / グローバル資本の教育改造 / 教育基本法改悪をとめよう】

新憲法策動と対応

 4月28日、政府は教育基本法「改正」案を国会に提出した。この改悪の狙いは、「憲法改正草案も意識し」(与党・教育基本法改正に関する検討会)と、グローバル化に対応する新自由主義・戦争国家への改造を教育分野から推進するところにある。

 改悪案は、「公共の精神」「伝統の継承」の名目で“国益”=グローバル資本の権益確保に奉仕する教育が強調され、「全18条にその精神を盛り込んだ」(検討会大島座長)ものとなっている。

 さらに、国際競争を勝ちぬくためのエリートを選抜し、一方に低賃金の使い捨て労働力を作るために、早期かつ効率的に振り分ける教育システムの全面導入をめざす。義務教育から「9年」を取り去り(5条)、競争と序列化を進める。“ついていけない”者・従わない者には「規律」を強要する(6条)。学校だけでなく家庭(10条)・地域住民(13条)に対しても統制と介入を狙っている。

 かつて三浦朱門元教育課程審議会委員長は「エリートは百人に一人」「非才・無才はただ実直な精神をつちかえ」と、教育再編の狙いをあけすけに語った。今回の改悪は、自民党新憲法草案同様、部分「改正」などではなく、現行教育基本法を根本から破壊しグローバル資本のための全く新たな教育法を作るものだ。

破壊が進む公教育

 すでに教育基本法本来の目標である平和と民主主義の教育、機会均等の原則は、市場原理と戦争路線導入によって破壊と解体が進んでいる。

 「日の丸・君が代」強制は日常化し、愛国心を評価項目にする学校が11府県172校以上(03年度)と増え続けている。義務教育費の国庫負担金削減・廃止で地域間の学校格差が広がり、公立モデル校としての選択制小学校、小中・中高一貫校、幼保一元化―早期教育のモデル園も作られている。幼少期から競争・選別が進み、高校・大学を卒業しても正社員としての就職は難しく、大多数が不安定雇用・失業を経験する。正規・非正規労働の階層に固定される社会ができつつある。

 弱肉強食の市場原理は青少年・若者の将来展望を奪い、「不登校」や「フリーター」「ニート」と呼ばれる形で社会から排除している。夢を奪われた青少年の「問題行動」に対しては、社会防衛的に取り締まる体制が学校・地域・警察の連携で築かれている。奈良県では、非行補導の対象に無断外泊・不登校までをあげる条例が制定された。

 グローバル資本の教育支配は、すでに耐え難いところにきているのである。

子どもの権利を地域から

 教育基本法をめぐる闘いは、単なる条文の“改悪反対”―もはや子どものためとはいいがたい現状の“教育を守れ”では的外れだ。破壊が進む教育を、子どもの権利を、再構築し発展させる地域変革の闘いでなければならない。

 憲法の基本的人権は子どもにこそ保障されねばならず、日本政府も批准した子どもの権利条約には、子どもの思想・信条の自由、意見表明の権利が明記されている。

 子どもが等しく平和と民主主義を学べる教育を求めて、教育内容の決定権を子ども・親・地域に取り戻していく運動をつくろう。(5月8日)

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS