ロゴ:国際法を市民の手に 前田朗 2006年06月02日発行937号

第91回『イラク世界民衆法廷(11)』

 2004年10月10日・11日、広島において、イラク世界民衆法廷広島公聴会が開催された。

 広島公聴会は、イラク国際戦犯民衆法廷(ICTI)とは別に、独立した実行委員会を組織して準備した。実行委員会には広島と長崎の市民が協力した。実行委員会共同代表は、岡本三夫、佐々木猛也、月下美孝、戸田清、三末篤實、森瀧春子、湯浅一郎、横原由紀夫であり、55名の市民が呼びかけ人となった。

 イラク世界民衆法廷は、最終法廷をイスタンブールで開くことと、各地でそれぞれの取組みをすることを確認していた。各地の取組みは全体として統一するのではなく、各地の自主性に委ねられていた。ムンバイ、ブラッセル、ニューヨークなどの公判では起訴状を提出したり、判事または陪審団が判決を言い渡す形式をとった。広島公聴会は、イスタンブール公判のための証拠収集の場として位置づけ、公聴会という名称とした。起訴状や判決はない。

 広島公聴会は、イラクにおける被害の実態と劣化ウラン弾などウラン兵器の違法性の解明を課題とした。証言は次の通りである。

 家正治(姫路独協大学法学部長)「イラク戦争・占領の違法性と民族自決権」は、国際法の発展史における戦争、侵略、自決権の概念を整理して、イラク戦争の違法性を論じた。

 池住義憲「自衛隊イラク派兵・多国籍軍参加の違法性」は、名古屋地裁に提訴した自衛隊イラク派兵差止訴訟の会代表の立場からイラク戦争を批判した。

 サミール・アディル(イラク市民レジスタンス戦線議長)「占領に抗して―まやかしの『政権移譲』」は、2004年6月に行われたイラク主権移譲が論理的にも実質的にもまやかしであり、イラクの主権も民主主義も回復されず、人々の人権も侵害され続けているとした。

 サマール・アジズ(イラク女性自由協会)「イラク女性自由協会の闘い」は、占領下における女性に対する暴力や人権侵害を取り上げ、女性の権利を保護するために活動している女性自身の闘いを紹介した。

 稲森幸一(弁護士)「イラク戦争の実相―ICTI起訴状から」は、ICTI検事団の一人として、ICTI起訴状の内容を紹介した。

 綿井健陽(ビデオジャーナリスト、アジアプレス)「現地報告―イラクで何が起きているのか」は現地取材に基づいて、占領下での武力紛争による市民の被害や生活の困難を明らかにした。

 ロザリー・バーテル(カナダ公衆衛生問題研究所前所長)の論文「戦争における劣化ウラン兵器使用」が提出された。バーテルは当初は参加予定だったが、直前になって来日キャンセルとなった。そこでバーテル論文を、柳元和(ウラニウム兵器禁止条約実現キャンペーン、医学博士)が解説した。

 市川定夫(埼玉大学名誉教授、遺伝学)「ウラン兵器使用の犯罪性及び違法性について」および森瀧春子(NO DUヒロシマ・プロジェクト)「湾岸戦争及びイラク戦争・劣化ウラン弾使用とその被害の実態―現地調査と医師の証言をとおして」はウラン兵器の実態と違法性をくまなく明らかにした。

 また、関連証言として、豊永恵三郎(広島被爆者)および森口貢(長崎被爆者)が被爆体験を語った。

ウエッブサイト

http://www.h3.dion.ne.jp/~nowar/wti/

http://www.worldtribunal.org/main/?b=33

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS