ロゴ:国際法を市民の手に 前田朗 2006年07月07日発行943号

第94回『イラク世界民衆法廷(14)』

 2005年2月10〜13日、ローマ(イタリア)でイラク世界民衆法廷ローマ法廷が開かれた。ローマ法廷は「真実と人道に反するメディアの罪悪――情報隠蔽政策を暴き出す」をテーマとした。

 2月10日夕方には開会式と平和コンサートが行なわれた。11日午前は「真実への権利と真実への義務」を柱に、「メディア戦争」の実態、メディアの戦争プロパガンダ、メディアの所有者は誰であり、いかなる利益を得ているか、従軍報道の実態、異議申し立てを沈黙させるやり方を批判する報告が続いた。11日午後は情報隠蔽による侵略戦争遂行の共謀、平和的解決の拒否、戦争の現実についての沈黙、民間人被害についての沈黙を告発した。

 12日午前は民衆に戦争協力させるための詐欺と戦争宣伝、戦争の経済的動機、戦争費用に関する沈黙を解明した。12日午後は排外主義と強奪をテーマとした報告が続いた。

 13日午前は真実の称賛として人民のメディアの努力が報告された。午後は真実、人道、知性の声として、真実を語る義務は文化を越えたものとして位置づけ、非暴力の未来を歌い上げ、再生を願う声に耳を傾けた。

 告発と証言は、コリーヌ・クマール(エル・タラー・インターナショナル)、デニィ・シェヒター(ジャーナリスト)、ダール・ジャマイル(ジャーナリスト)、タリル・スウィフト(ジャーナリスト)、ガブリエレ・ザンパリニ(ジャーナリスト)、アンジャリ・カマット(ジャーナリスト)、トニィ・アレサンドリニ(人権活動家)、アイシェ・ベルクタイ(ピース・イニシアティヴ・トルコ、イラク世界民衆法廷実行委員)などである。

 陪審員は、サミール・アミン(第三世界フォーラム)、ウペンドラ・バクシ(ウォーウィック大学教授)、フランソワ・ウタ(三大陸センター、リューベン大学名誉教授)、マルゲリータ・ハック・(天文学者)、ワンガリ・マサイ(ノーベル平和賞受賞者、ケニア環境大臣)である。

 2月13日、陪審団は最終宣言を発表した。

 1.米英によるイラク戦争にはいかなる正当化理由もなく、国際法違反であり、侵略の罪にあたる。

 2.イラク人民は侵略戦争に対してレジスタンスを行なっており、これは国連憲章に合致し正当である。

 3.戦争と占領において占領軍は多くの違法活動を行なっている。不均衡で無差別な攻撃による被害。おびただしい人権侵害。クラスター爆弾やウラニウム兵器など禁止された兵器の使用。環境破壊。病院、学校などの破壊。自然資源の略奪。イラク人民の承認のない政府の樹立による人民の自決権の侵害。恣意的処刑、誘拐、暗殺、拷問。歴史的遺産の破壊。ジャーナリスト殺害。病院などへの故意による攻撃。

 4.イラクへのイタリア軍派遣はイタリア憲法11条違反であり、侵略への加担である。

 5.イラク人民を民族や宗派によって分裂させ、イラク国家の統一と主権を侵害している。

 6.西欧社会においてイラクのイメージを歪めて広めている。

 7.イラクで行なわれている犯罪に対して国際社会の反応は不十分である。国際法の最後の守護者である国際世論こそ、イラクで行なわれている犯罪に裁きを下すべきである。

 以上の認定により、世界の平和運動は、すべての占領軍のイラクからの撤退を求め、イラク人民が自由に自己決定する権利を表明できるようにするべきである。各国の司法機関、欧州の司法機関、国際的司法機関は、イラク人民の再建と、戦争犯罪者の処罰に向けた努力を行なうべきである。特にファルージャについて国際調査を行なうべきである。国連事務総局に人権擁護のためにあらゆる努力を傾けるよう訴える。

 以上がローマ法廷の最終宣言である。

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