2006年07月21日発行945号

【東京・日野市は否決 「国の見解」繰り返し】

「今日が新たな出発」と報告集会(7月11日・日野)
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 東京・日野市議会は7月11日、臨時議会を開催し、市民から提出された無防備地域条例案について審議した。署名総数6191筆、有効署名は法定数のおよそ2倍の5550筆。軍備に頼らず地域の平和を、と求めた市民の声は否決された。

 本会議では請求代表者による合計25分の意見陳述が行なわれた。まず、有賀精一さんが条例の意義について全般的な発言。「イラク自由会議(IFC)が、武装闘争ではなく市民の自治による平和の地域づくりをめざす取り組みを広げている」と武力に頼らぬ平和構築の意義を示し、明らかになったばかりの隣接の国立市長の意見書から「無防備による戦争放棄の町が日本全土を包囲して実質的な無防備による戦争放棄の国にならんことを」と引用してその普遍性を強調した。

沖縄出身者が訴え

 市長が付した条例制定反対の意見書は「(宣言は)国において行われるべきものであり、宣言しても実質的な効力を有しない」という国の見解をそのまま繰り返し、「地方公共団体の権限に属さない事務で地方自治法に抵触する」というもの。

 これに対する整然とした反論を鷲尾由紀太さんが行なった。「国際的な条約は各国が勝手に解釈できるものではない。まず、『地方の首長から出されることもある』という赤十字国際委員会の解釈は国際社会で認められている」。さらに、「市民の生命財産を守るために尽力することは地方自治法で規定する市の本来の業務だ」とした。

 「軍隊は住民を守らない」という歴史的教訓を実例で示したのは沖縄出身の上地雅春さん。日本軍にガマから追い立てられ、最後は実家で死のうとした母は「兵隊さんが来なければもっと住民は助かったはずだ」と繰り返し語るという。さらにジュネーブ条約58条の「人口の集中する地区の近くに軍事目標を設けることを避ける」を挙げて隣接する米軍横田基地の危険性を指摘した。

共産党議員は棄権

 本会議から付託を受けた企画総務委員会で議論が集中したのは、宣言主体をめぐる赤十字国際委員会と政府の解釈の違いについてだ。「なぜ政府の解釈のみを採用するのか」との質問に市は「現在の状況では国の解釈が有効」と説明抜きに繰り返した。「防衛、外交などは国が行なうこと」との答弁に対して「軍事行動と市民の安全とどちらを優先するのか」と問われると、「自治体の役割に沿って努力する」とあいまいにした。

 これまで日野市での無防備条例運動に協力してきた共産党議員団5名は「ジュネーブ条約追加議定書は戦争を前提にしている」「条例は将来にわたって日野市民の占領への抵抗権をしばる恐れがある」として採決時退場し、棄権。条例案は反対多数で否決となった。

 市民の一人は「反対の議員も『平和を求める市民の皆さんの労を多とする』と述べるなど、署名の力は大きな力だったと思った。この運動に出会えてよかった。さらに多くの人に議会の様子を伝えて戦争に協力しない地域をつくっていきたい」と話していた。

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