2006年08月04日発行947号
日本崩壊
小泉残酷物語(3)

【若者大失業と非正規雇用拡大 拡大する貧困と人権否定】

突出する日本の貧困化

 小泉構造改革による日本社会の格差拡大。それが世界でも突出した異常なものであることが明らかになった。

 7月20日、OECD(経済協力開発機構、「先進」30か国で構成)は対日経済審査報告書を発表。日本の相対的貧困率が上昇し、米国についで第2位になったと指摘した。相対的貧困率とは、生産年齢人口(18歳〜65歳以下)を対象に、その平均所得(可処分所得―注)の半分に満たない所得しかない人口が全体に占める割合をいう。トップの米国が13・7%、日本が13・5%の2位となった。7・4人に1人が貧困者。これが実態なのである。

 同報告書は、その原因を非正規労働の拡大による労働市場の二極化と指摘した。

小泉が非正規雇用拡大

 総務省の「労働力調査」(5/30)もこの二極化を裏付けている。2006年1〜3月期で、パート・アルバイト・派遣社員・契約社員という非正規雇用労働者が全労働者の33・2%を占めていると公表した。84年同調査開始以来の最高値となり、3人に1人が非正規雇用である。小泉時代の2001年〜2005年に正規雇用労働者は3640万人から3374万人へ266万人減少し、非正規雇用は1360万人から1633万人へ273万人も増加した。

 この急激な変化は、95年に日経連(現在の日本経団連)がごく少数の基幹社員以外を不安定雇用労働者に置き換える方針を打ち出し、政府がそれに応える労働法制での規制緩和を強行し、派遣、契約、請負やアルバイト・パートを拡大させてきた結果だ。

 小泉はその流れを加速させ、04年に派遣労働の完全自由化などの規制撤廃を行なった。

生活破壊の格差拡大

 企業は人件費コストを大幅に削減するために、非正規雇用労働者を利用した。賃金をはじめ非正規雇用の置かれている状況は、「格差」という言葉では到底表せない「悲惨」のひとことに尽きる。

 厚生労働省の05年調査でも、正規雇用と同じように働いても、非正規雇用の賃金はその64%にしかならない(別表参照)という厳然たる差別が明らかになっている。「生活費をまかなえない」「経済的に安心な老後がもてない」というのが多くの非正規雇用労働者の切実な訴えだ。

若者は使い捨ての道具

 なかでも若年層は最大の犠牲を被っている。15歳〜24歳の若年層では、非正規雇用は48%と、実に2人に1人。資本がバブル崩壊後の不況を乗り切るときに、新規学卒者採用を停止し、若年層を世代として不安定雇用・大量失業に押し込んだ結果だ。

 いわゆるフリーター(パートタイム労働者)は、統計によってさまざまだが、内閣府調査で01年に417万人(15歳〜34歳)。小泉時代も拡大し、2010年には450万人に増大との予測もある。この部分が相対的貧困層の多くを占めており、貧困率はさらに悪化せざるを得ない。

 小泉は「格差がない社会などない。格差を認め、力を発揮できる社会が望ましい」と開き直るが、現在の日本社会は、若者層が力を発揮するチャンスも展望も見いだせない社会となっている。

 非正規雇用の若年層は労働現場で人間的な扱いから排除されている。派遣先の紹介や勤務先、勤務時間の指示が携帯電話のメールで処理される。「仕事先で一度も名前を呼ばれない日もある。本気でしかられることも誉められることもない。次の日には来ない人間ですから」という人格無視の労働を強いられている。

 労働を通じて人間的能力を磨き社会的人格を形成する機会は、最初から奪われている。その結果、不安定雇用の状態から抜け出すことがますます困難となっていく。若年層をを「使い捨ての道具」として扱う小泉改革路線のままでは、日本の未来は暗黒となる。

社会崩壊に歯止めを

 小泉内閣の数年間に、グローバル資本は史上最高の利益を上げ続けた。一方、労働分配率(粗利益に占める人件費の割合)は02年度から3年連続で低下している。労働者の生活賃金と貯蓄が、企業収益に強制移転されたのである。

 グローバル資本は、さらに労働者保護を全面解体する「労働契約法」の導入をめざしている。ひとにぎりのグローバル資本のしたい放題による日本社会崩壊にストップをかけなければならない。、非正規雇用の賃金差別の是正、同一価値労働同一賃金、職業訓練や社会保険の適用拡大、正規雇用を拡大する根本的政策転換が求められている。

(注)可処分所得

税金・社会保障負担を引いたあとの自由に使える所得

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