2005年6月24日〜27日、イスタンブール(トルコ)でイラク世界民衆法廷の最終法廷が開かれた。会場はイスタンブール中心のトプカピ宮殿内の旧造幣廠建物である。隣がアヤソフィア、その向うがブルーモスクである。それまでに世界各地で法廷や公聴会を開いてきたメンバーが集合した。
検事団長はリチャード・フォーク(サンタバーバラ大学教授、アメリカ)とトゥルグット・タルハンリ(イスタンブール・ビルギ大学教授)の二名である。
6月24日冒頭、フォーク検事団長は、法廷が世界中でイラク戦争に反対した人々の願いを受けて開催されること、ラッセル法廷以来の世界の民衆が築いてきた民衆法廷の歴史とその必要性と正当性を力説した。民衆法廷は国際法の長い歴史の一部である。民衆法廷は権力法廷のように執行力はないが、国際法を尊重するための試みである。国家や国連が沈黙したために、侵略の被害者の保護ができない時、民衆法廷は法を創造する正当性を手にする。民衆法廷は市民社会の機関であり、真実を確認する。暴力によってではなく、良心、政治闘争、意見表明を通じて未来のために活動する。イラクにおいてアメリカが行なっていることを徹底的に明るみに出して、その犯罪性を確認する。フォーク検事団長は、法廷検事団のアプローチ全体を説明し、国連憲章のもとでの諸国家の責任、武力不行使原則、国際法の違反について順次取り上げていくことを説明した。
法廷は6つのセッションに分けられた。第1セッションは「国際法や国際機関の役割」である。タルハンリ検事団長が統括した。証言は、フィル・シャイナー(弁護士、イギリス)「予防的攻撃や武力の一方的行使の違法性」、ハンス・フォン・スポネック(元国連事務総長補佐、ドイツ)「2003年の侵略前後の国連の活動」、ラリー・エヴェレスト(ジャーナリスト、アメリカ)「米英のイラク干渉の歴史」、ジム・ハーディング(レジーナ大学元教授、カナダ)「新植民地主義の潮流」、エイミィ・バーソロミュー(カールトン大学教授、カナダ)「帝国の剣としての法と人権」、イサ・シヴジ(ダルエスサラーム大学教授、タンザニア)「国際機関と国際法の信頼低下の意味」、トニィ・アレッサンドリーニ(ラトガース大学講師、アメリカ)「グローバルな反戦運動の意思の侵害は平和に対する罪である」である。
第2セッションは「諸政府の責任」であり、アーメト・インセル検事が統括した。証言は、バスキン・オラン(外交研究者、トルコ)「アメリカのイラク攻撃とトルコ政府の政策」、カレド・ファーミィ(ニューヨーク大学助教授、エジプト / アメリカ)「イラク戦争におけるアラブ諸国の責任」、ググリエルモ・カルチェディ(アムステルダム大学元教授、オランダ)「欧州諸国の責任」、ウォルデン・ベロー(フィリピン大学教授、グローバル・サウス)「意思の連合やその支持者の責任」である。
第3セッションは「メディアの責任」で、エメール・マドラが統括した。証言は、ソウル・ランダウ(映像ジャーナリスト、アメリカ)「メディアの経済政治的関係」、デイヴィッド・ミラー(グラスゴー大学教員、スコットランド)「戦争と占領におけるメディアの過ち」、メーテ・チュブックチュ(ジャーナリスト、トルコ)「戦争ジャーナリズムの道義的責任」、ジャヤン・ナヤール(ウォーウィック大学教授、マレーシア / イタリア)「真実と人道に反するメディアの過ち」、エメール・マドラ(インディペンデント・ラジオ、トルコ)「オルタナティヴ・メディアの探求」である。