2005年6月27日、イラク世界民衆法廷イスタンブール公判の良心の陪審員は、最終判決を公表した。陪審長はブッカー賞受賞の作家アルンダティ・ロイである。日本でも『小さきものたちの神』『わたしの愛したインド』『帝国を壊すために』『誇りと抵抗』などが翻訳されている。
判決は次のように始まる。
「2003年3月に、イラクの不法な侵略と占領のために米英政府が申し立てた理由は、虚偽であると判明した。実際の動機は、中東を支配し、優位に立つためであった。中東で主導権を確立することは、世界最大の石油埋蔵量を支配し、米国の戦略的な同盟国イスラエルの立場を強くすることに役立つ」(以下、安原桂子訳による)。
判決は、大量破壊兵器の見え透いた嘘、イラクへの厳しく非人間的な経済制裁、飛行禁止区域の設定と爆撃、世界中で起きた戦争に対する大規模な反対の無視、イラクの国家と社会の破壊と荒廃、イラク社会の民族的・宗教的分裂(帝国の分割統治政策)、非人間的な状態の監禁、行方不明、拷問、イラク経済の民営化、規制緩和および自由化を指摘したうえで次のように述べる。
「占領に対する反対は広範囲にわたっている。 平和的手段を使う政治的、社会的、市民的レジスタンスは占領軍によって抑圧される。強力な武力抵抗や絶望の行為へとイラク国民を駆り立てたのは占領軍の残酷さである。国連憲章と国際法で具体化された法則では、一般国民が占領に抵抗するのは正当であり、理にかなったことである。 それは、どこにいても正義と自由を願う人々が支援する価値がある」。
その上で判決は被告人らの罪状を確認する。まず、米国政府と英国政府の罪状について確認している。
- 国連憲章やニュルンベルク原則に違反して侵略戦争を計画し、準備し、行った
- イラク民間人とインフラストラクチャーを標的にした
- 不均衡な殺戮力をもち、無差別攻撃を行う兵器の使用(クラスター爆弾、焼夷弾、劣化ウラン 弾および化学兵器)
- 軍事活動の間と占領期間中に民間人の生命を守らないこと
- 平和的な抗議者に対して致命的な暴力を振るった
- 集団処罰を含めて容疑や裁判なしでイラク市民を処罰すること
- イラク人兵士と民間人を拷問、残酷、非人間的な取り扱いをした
- 不法に侵略し、占領した相手国の法律を書き換えたこと
- 故意に環境を荒廃させたこと
- 女性の地位が極端に低下するような社会的条件を積極的に作った
- 考古学的文化遺産を保護しなかった
- メディアの検閲を含めた情報の権利の行使の侵害
- 拷問を再定義し、拷問と不法監禁の使用を認めた