2006年09月22日発行953号
ロゴ:国際法を市民の手に 前田朗

第99回『イラク世界民衆法廷(19)』

 2005年6月27日、イラク世界民衆法廷判決は、国連安保理事会の責任も取り上げている。

1.侵略の罪からイラクを守らなかった

2.イラクに厳しい経済的制裁を課した

3.飛行禁止区域での違法な爆撃を許した

4.アメリカが国連を支配し、かつ他の加盟国の上に立つ状況を許していた

 また、戦争に関する情報操作に協力した企業責任にも言及している。大企業メディアについて。

1.米英によって撒き散らされた意図的な虚偽報道を流布した

2.占領軍によってイラクの人々に対して行われた残虐行為を報道しなかった

 判決は最後に次のような勧告をしている。

1.連合軍のイラクからの即時・無条件撤退

2.連合国政府は不法な侵略および占領が引き起こした人道的、経済的、生態系・文化的遺産破壊についてイラクに戦争賠償と補償金を払う

3.占領下で作られた法律、契約、条約および機構はすべて無効である

4.グアンタナモ刑務所およびすべての米国軍事刑務所は、直ちに閉鎖

5.ブッシュ大統領、ブレア首相他イラク侵略の罪と人道に対する罪に責任を負う人々の徹底的調査

6.違法な戦争に参加した人々の責任追及のプロセスを始めるべきである(わざと嘘をついたジャーナリスト、人種的、民族的・宗教的な憎悪をあおった企業メディア、戦争から利益を得た多国籍企業)

7.戦争から直接利益を得た米英企業に対して行動を起こすべきである(そのような例として、ハリバートン社、ベクテル社、カーライル社など)

8.兵士たちは良心を行使し、不法な戦争に参加することを拒否するべきである

9.海外の米国軍事基地をすべてなくすための国際的キャンペーン強化

10.世界の人々は、イラク占領に物資、後方支援あるいは精神的支援をしようとする政府のどのような努力にも抵抗し、拒否すべきである

 最後に判決は次のように述べている。

 「我ら、良心の陪審員は、これらの勧告の具体性によって皆の望む世界が必要とする基礎が置かれることを望む。つまり、このような世界では恐怖や自己利益ではなく人々の意志によって国際機関が形作られ、作り変えられる。またこの世界では、ジャーナリストや知識人が沈黙しない。またこの世界では世界の人々の意志が中心的であり、国家の安全保障や企業利潤より人間の安全がずっと大事にされる」。

 こうして2004年末から始まったイラク世界民衆法廷が一段落した。民衆法廷が世界の反戦平和運動のなかで大きな役割を果たしたことを確認しておきたい。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS