ODAとは何か?―戦争のための「援助」は要らない―
はじめに
2002年9月、日本のODA(政府開発援助)によってつくられたダムにより人権侵害、生活破壊、環境破壊などの甚大な被害をこうむったとして、インドネシアのコトパンジャン・ダム被害者住民3,861名が、日本政府、援助機関、日本企業に対して原状回復と損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。史上初のODA裁判の開始である。フィリピンでも同様の動きが出始めるなど、いまや日本のODAはアジア各地から告発されつつある。
日本国内でも、鈴木宗男によるロシアODA疑惑の発覚以降、官僚と企業の癒着と汚職の温床としてのODAに対する国民の批判的世論が高まりつつある。いまこそ、日本企業のための「援助」、政府の外交政策の道具としての「援助」として従来から批判されてきた日本のODAのあり方を根本から問い直す絶好の機会である。
こうした国民的批判を浴びる中、政府・外務省は「ODA改革」の推進を打ち出すことにより、ODAに対する国民からの同意をとりつけようとしている。しかし、現在進めつつある「ODA改革」とは、「人道援助」という従来の仮面すら捨てさって「国益の追求」を全面に押し出し、援助を外交と戦争の道具として公然と活用できるようにすることをねらうものだ。それはまさに、ODA改悪の動きにほかならない。そして、こうしたODA改悪の動きは、この間のアフガニスタン空爆への自衛隊の出兵・協力や執拗な有事法制制定の動きに見られる小泉内閣の戦争国家化路線と軌を一にしている。したがって、それは、明確に戦争協力のためのODAへと、すなわち「人殺し」のために使えるODAへと道を開こうとするものなのである。これは、米ブッシュ政権の強行している「戦争のグローバル化」政策に日本から呼応しようとする動きである。
このブックレットは、そうした情勢に対応するものとして書かれた。このブックレットが、世界各地で展開されているODA被害者住民の闘いと連帯しながら、現在進められつつあるODA改悪の動きと闘うために活用されるなら幸いである。
民主主義的社会主義運動 MDS 理論政策委員会
Movement for Democratic Socialism
|