2018年02月09日 1513号

【命脅かす安倍政権の福祉切り捨て 医療費削減と負担増 病院追い出しで医療難民続出】

 今年は診療報酬と介護報酬の改定が重なり、政府予算案の焦点になっている。安倍政権は、診療報酬について診察料や入院料に当たる部分を0・55%に引き上げることを決めた。マスコミは、報酬の引き上げが負担を増やすことから「国民負担の是非 議論置き去り」(12/19朝日)という。

 だが、報酬引き上げ以外の改定項目には深刻なものが含まれており、実行されると国民の生命さえ危ぶまれる。保険料が払えず医療そのものから排除される事態や、病院の経営がさらに困難になり病院から追い出されるなど医療難民が生じるからだ。

保険料上げ取り立て強化

 4月から国民健康保険の財政運営が市町村から都道府県に移管される。これは何をもたらすか。

 現在、年収200万円の世帯(40代夫婦と未成年の子2人、固定資産税額5万円)の保険料は平均で約30万円であり、年収の15%にもなる。高すぎる保険料の要因として、国庫補助の削減、市町村国民健康保険財政の赤字がある。無職や非正規労働者の加入増の中で、加入者の約16%が滞納している。払いたくても払えないのが現実だ。

 安倍政権は、国民健康保険の都道府県化で規模拡大による財政基盤安定を強調するが、実際は保険料引き上げや取り立て強化を狙う。

 その仕組みは次のようになる。都道府県は標準保険料率を市町村ごとに決めて納付金を提示する。市町村は納付金を都道府県に収める。標準保険料率より高い保険料であれば削減を、低ければ保険料引き上げを市町村は迫られる。納付金は完納が義務付けられるため、市町村には取り立て強化の圧力が高まる。加えて、一般会計からの繰り入れ削減や取り立て強化をしなければ財政支援も削られる。


安上がりの病床へ再編

 同時に、地域医療構想がスタートする。

 地域医療構想とは何か。団塊の世代が75歳以上になる2025年の必要病床数を見越して地域の医療提供体制を定めるというのが名目だが、狙いは病床削減による医療費削減だ。安倍政権は、16万から20万床の削減を目標とする。要は、患者20万人を病院から追い出すものに他ならない。

 今回の診療報酬改定には、「重症度、医療・看護必要度」該当患者(重症者)割合が25%以上の場合の7対1(患者7人に看護職員1人)病床などの入院基本料引き下げ、紹介状なしの大病院受診時の追加負担対象拡大、製薬会社の高利益温存などが含まれている。

 なかでも、全病床の4割を占める7対1病床削減問題は医療現場を直撃する。

 改定では、この7対1病床と重症者が25%に満たない10対1病床について、入院基本料を「急性期一般」として統合。7対1が適用される該当患者入院割合を25%から30%に引き上げることによって、10対1に転換させようとする。さらに、より軽症の13対1病床を15対1病床に統合させるなど、人員を削った安上がりの病床へ再編するものだ。



 この攻撃は、患者の絞り込み、病院の体制縮小、医療従事者の労働強化につながる。関連団体は「現場が大混乱する」(日本医師会)「医療の安全が保てなくなる」(日本看護協会)と問題視している。

 患者には入院抑制、病院には経営難となり、医療体制をますます深刻にする。今でも、入院患者や家族の多くが短期間で退院・転院を迫られ困っている。病院から介護施設へ(医療難民)=A施設から在宅へ(介護難民)≠ニいう流れがいっそう強められ、必要な医療と介護を受けられずに自宅で苦しみつつ亡くなる―こうした事態が当たり前になってしまう。

医療費削減に終止符を

 自民党政権は1980年代初頭から「医療費亡国論」を唱え、医療費抑制を続けている。小泉政権は、社会保障費削減の一環として診療報酬を連続4回マイナス改定。その結果、医師不足など医療崩壊≠フ事態が生じてしまった。

 一方で高齢化が進行し、それにつれて医療費が伸びていく。軍事大国をめざす安倍政権は社会保障費を敵視して削減策を強行し、医療をその標的としている。

 安全な医療を安心して利用できるようするために、医療費削減政策を止め、必要な医療予算を投入して医師など医療従事者を抜本的に増やすべきだ。

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