2018年02月09日 1513号

【ドクター林のなんでも診察室 看護師を呼べども来ない病院急増!?】

 皆さんが入院した時、苦しくなって看護師を呼んでも来てくれない、心電図などのモニターの警告が出ても誰も来てくれない、などは恐怖ですね。しかし、これはすでに現実で、より悪化しようとしています。

 急性期患者病棟での診断・治療は、生命の維持とその後の経過に重大な影響を与え、近年の検査や薬剤治療・手術の増加などで極めて人手がかかります。そのため急性期の患者の病棟は、基本的に患者7人当たり看護師を1人としています。入院料金も高く設定されています。この病棟認可の条件が年々厳しくされどんどん減らされています。

 さらに、2018年度政府予算案と関連して、この患者7人対看護師1人の病棟が大きく減らされようとしています。重症の患者が減るわけではないので、7対1と10対1の間に人手が少ない病棟を段階的に新設して、これまでは7対1の病棟に入院していた患者をそこに移そうとしているのです。

 その結果、7対1病棟はさらに減少し、より重症患者に限定され、強い苦しみや不安などに対応できなくなります。あらゆる患者が、ぎりぎり以下の看護体制の病棟に入れられます。

 今までになく露骨に、人手の少ない病棟に患者を集め、医療費を削減するわけです。今でも少なからずの病院で見られる看護師や医者を呼べども来ない¥態が急増するのです。

 病院側の労働強化もひどく、最近医師の勤務時間を定めていないなど労基法違反(北里大学病院)、医師の2%は過労死ライン(杏林大学病院)などが報道されましたが、大なり小なり大部分の病院が同じ状態です。

 その原因は明白です。OECD(経済協力開発機構)35か国の中で、日本は1人当たり医療費(15〜16年)は15位です。ところが、1人当たりの医師数は実に31位、医学部卒業人数34位、後ろから2位。看護師は12位ですが、医者などの肩代わりをしてしゃにむに働いているのです。

 逆に、1人当たり薬剤費はなんと3位、世界に先駆けてべらぼうに高価な抗がん薬を認可したのは安倍内閣です。さらに、高額医療機器となると、人口当たりの台数はCTもMRIもダントツ1位、CTはアメリカの2.6倍、MRIも1.4倍です。おかげで医療被ばくは世界平均の6倍以上です。

 軍事費増によって削減されている医療費は、製薬巨大企業(日本の5社だけで内部留保6兆円強)と医療機器企業によってさらに吸い取られます。医療労働者の労働も患者のためにではなく、巨大企業の利益のための労働に多く費やされています。

 この路線は、軍事大国化すればするほど、露骨に推進されることを今年の予算案は示しているのです。

(筆者は小児科医、3面に関連記事
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