2018年09月28日 1544号

【コラム見・聞・感/北海道命名150年を祝う道庁とは】

 明治維新150年の今年はまた「北海道命名150年」でもある。それまで蝦夷(えぞ)地と呼ばれたこの土地は、1869年の太政官布告によって正式に「北海道」と名付けられた。

 蝦夷地を6度も訪れ、アイヌの人たちとも交流を深めた探検家・松浦武四郎は、アイヌ語で「この土地に生まれた者」を意味する「カイ」を語源として「北加伊道」の名称を考案。先住民の北の土地という意味だ。だが、松浦が先住民に対する敬意を込めたこの名称を、明治政府は「北海道」という、古代律令時代の五畿七道(東海道、東山道など)に連なる天皇専制体現の行政区画名に改変してしまった。五畿八道としたのだ。

 北海道庁は8月5日、天皇・皇后を出席させ、記念式典を盛大に挙行。高橋はるみ知事があいさつした。だが筆者は強烈な違和感を抱いた。

 鎌倉時代に入り、貴族から武士に実権が移ると日本社会のトップは征夷大将軍と呼ばれた。征夷とは蝦夷征伐のことだ。江戸時代、蝦夷地は天領(幕府直轄地)となるが、アイヌの人々の反乱と鎮圧が繰り返された。本紙連載「非国民がやってきた〜土人の時代」(第254258回)に詳しいが、蝦夷地の歴史は和人(日本人)による侵略史そのものだ。

 このような歴史的事実を知る人々にとって、明治政府が北海道開発のため屯田兵を送り込んだ「開拓」もアイヌ先住民の和人同化政策であると同時に再植民地化と映る。沖縄に対して行われた琉球処分の北海道版なのだ。開拓使所管の国有財産を明治政府の藩閥政治家の「お友達」にタダ同然で払い下げようと狙った「開拓使官有物払い下げ事件」も安倍政権のモリカケ問題を思わせる。

 道政トップの知事が、節目というだけで征服者の象徴の天皇を招き、被征服の歴史を祝う式典を開き、喜々としてあいさつする。筆者はこの奴隷根性こそ、北海道を取り巻く諸問題解決の妨げになっているように思う。

 北海道では、30年前の「国鉄改革」で全路線の3分の1を失い、その「改革」が生み出した政策が元で、今また、残る路線の半分を失おうとしている。福島原発事故の惨事を見た道民が毎週、道庁前で原発廃炉の声を上げているのに知事はその決断もしない。経産省出身で国の意向に従うだけの知事を、一部道民は「置物」と揶揄(やゆ)している。

 「アイヌ土人に鉄道なんてぜいたく。行きたい場所があるなら土人は裸足で歩いて行け」が安倍政権と官僚たちの本音なら、奴隷根性にまみれた「置物」を取り換える権利は土人≠ノこそある。「土人にも土人の誇りってもんがあるんだよ」。そう言った北海道新聞記者もいる。来年は知事選。その誇りで北海道を隷属から独立の地に変えたい。      (水樹平和)
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