2020年01月17日 1608号

【伊藤詩織さん勝利判決の画期的意義/性暴力なくす運動に勇気与える/OPEN〈平和と平等を拓く女たちの絆〉山本よし子】

 ジャーナリスト伊藤詩織さんが性暴力被害を受けたとして山口敬之元TBS記者に損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は昨年12月18日、伊藤さんの訴えを全面的に認める判決を出した。

偏見打ち破る判決

 性行為について「合意があったかどうか」が争点になった。判決は、伊藤さんは「強度の酩酊状態」でほとんど意識がない状態で「合意がないままに性行為に及んだ」と認め「供述は信用性が高い」とした。

 山口は自らの行為に対する責任を全く感じていない。「自らすすんで泥酔し、正体不明になった」と原因はすべて伊藤さんにあるかのような発言までしている。また、当時警視庁刑事局長の職にありながら事件をもみ消そうとした中村格(いたる)警察庁官房長は「女も就職の世話をしてほしいという思惑があったから飲みに行った」との発言を繰り返す。

 判決は、男女二人きりの飲食は「性行為の同意があったと思われても仕方がない」というゆがんだ見方や「ハニートラップ(甘い罠)では」という誹謗中傷を打ち消す画期的な意義を持つ。

被害者の闘いを後押し

 東京地裁は山口が起こした名誉毀損による慰謝料請求なども退けた。

 山口に出された逮捕状は執行停止。検察審査会も「不起訴相当」となり、刑事裁判の道は閉ざされてしまった伊藤さん。だが泣き寝入りはしない。民事裁判で真実を明らかにしたのだ。「性暴力に関する社会的、法的システムを、変えなければならない。そのためには、まず第一に、被害についてオープンに話せる社会にしたい」(伊藤詩織著『Black Box』)と願い、告発の記者会見、書籍出版など、バッシングやフラッシュバックに悩まされながらも精力的に活動してきた。

 これに対し、山口は「すべてうそ」と否定し、伊藤さんを名誉棄損で逆に訴えてきた。しかし、判決は「自らの体験・経緯を明らかにし、広く社会で論議することが、性犯罪を取り巻く法的・社会状況の改善につながる」と伊藤さんの活動の公益性を明記した。

 伊藤さんが民事裁判に提訴した日をきっかけに始まった毎月11日のフラワーデモ=B全国に広がり、勝利判決を導く力となった。

 今回の判決は、性暴力をなくす運動に大きな勇気を与えた。このたたかいをさらに強め、高裁での勝利、刑法改正を実現するたたかいにつなげていこう。

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