2020年01月17日 1608号

【避難者の住宅追い出しやめよ 当事者とともに福島県に迫る】

 区域外避難者の住宅打ち切りをめぐって12月25日、ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)と「避難の権利」を求める全国避難者の会が共同で福島県と交渉を行った。

 国家公務員宿舎入居の有償契約を結んでいた避難者に対する2019年4月以降の「2倍家賃」請求と、17年4月以降未契約状態で住み続けている5世帯に対する追い出し提訴方針の中止・撤回を求めた。だが、県当局は頑なに拒み、ゼロ回答に終わった。

 県は、事前通告した質問に「未納金を完納して退去すれば(2倍請求は)やめる」と答え、一方的な退去の方針を変えない。「2倍家賃分を財務省に納めているのなら、財務省が要らないと言えばやめるのか」の問いには「われわれの根拠としてはそうなる」と、宿舎所有者である財務省の意向との関係は認めた。

路頭に迷えというのか

 国と県が17年3月末の無償提供打ち切り後2年間の「セーフティネット契約」を交わしたのは「2年の間に自立してほしい」との願望による。ところが2年後、入居者の実態を把握しそれに見合った支援策を示すどころか、期限が来たから打ち切るとした。

 「次の住まいが決まってない人たちに明け渡し訴訟を起こす―路頭に迷えというのか。なぜ転居できないのか、県は把握しているのか」と迫ると、「個別に連絡しているが電話に出てもらえない」。しかし、5世帯の中には県職員と個別に連絡を取っている世帯もある。県提案の民間賃貸物件は家賃が高く支払い困難、都営住宅に応募しているが9回落選など、転居のめどすら立たない世帯だ。

 2倍請求対象世帯の当事者が訴えた。「福島県にいろいろ話しても聞くだけで何も改善されない。説明会では『除染しただろう。戻れ、戻れ』。郡山の自宅を訪ねてきて『家を売ればいいじゃないか』と勝手なことを言う。生まれつき重い心臓病の子がいて、放射能被ばくがとても心配。避難先にある病院で手術した。避難先を離れたくない」

 当日、復興大臣と福島県知事宛てネット署名「原発避難者への懲罰的な『2倍家賃』請求を止めてください」の追加分を提出。署名数は合計2万8714筆となった。
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