2020年01月24日 1609号

【ミリタリーウォッチング 自衛隊募集へ自治体協力が加速 市民が声を上げ押し戻そう】

 昨年11月17日、産経新聞に「自衛官募集の情報一括提供 政令市協力4市のみ」との見出しで、自治体の自衛官募集業務への「協力実態」に関する記事が載った。

 これは、昨年2月に安倍首相が「自衛隊員募集に対して、全国の自治体の6割以上が協力を拒否しているという実態がある」と発言したことを受け、政府、防衛省が要求する「対象者(18歳前後と22歳前後)の氏名、年齢、住所などの情報を『紙媒体または電子媒体』で一括提出」に従う自治体がどれだけ増加したのかを示すことで、動きを加速させようとの狙いが感じ取れる記事だ。

維新市政が呼応し提供へ

 大阪市は今年度からDVDで、京都や川崎、熊本各市も紙媒体で一括提供を開始。大阪市では、安倍発言に呼応し、当時の吉村市長の指示で切り替えた。神戸市は10月市議会で、市長が「自衛隊は阪神大震災など災害時に大きな役割を果たしている。対応に向けて検討する」と表明。早ければ今年2月にもUSBなど電子媒体で一括提供する方向で調整しているという。さらに、京都市は、2020年度に18歳と22歳になる市民約2万8千人分の宛名シールを作成し、自衛隊に提供するという至れり尽くせりのサービスを打ち出した。

 早速この記事に呼応する動きが現れた。昨年6月に維新市長が誕生した堺市では、12月16日の市議会総務財政委員会において、維新市議からの「自衛官募集について」の質問に、永藤市長は「(産経の同記事を見て)当日に検討するよう指示を出しています。前向きに進めていきたい」といった旨の答弁をしている。

 すでに全国1741市区町村中約39%の683自治体が「紙媒体または電子媒体で一括提供」に応じている。しかも、「一括提供」以外では「適齢者を抽出した住基台帳の写しを閲覧、防衛省職員が書き写す」という「一括提供」の一歩手前の「協力」を行っている自治体がほとんどだ。

協力に法的根拠なし

 だが、国に対してこれほどの「積極的協力」を行わなければならない法的根拠は自衛隊法、自衛隊法施行令、住民基本台帳法のどこにもない。自治体を戦争国家に組み込もうとする流れは大きいように見えるが、押し戻すことは可能だ。

 今こそ、「個人情報は勝手に渡さないで!」の声を上げ、監視を強めることが必要だ。まず、自分の自治体が自衛隊にどんな「個人情報の提供」をしているのか問い合わせてみよう。だれにでもできる一歩だ。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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