2020年01月24日 1609号

【「9300億円工期12年」と防衛省 どこが「早期危険除去」か 辺野古推進勢力とカジノ利権】

 2020年、辺野古は新年を祝うハチウクシー(初興し)で明けた。名護市米軍キャンプ・シュワブの金網越しにK1護岸が見える松田ヌ浜。辺野古新基地建設を今年こそ断念させようと市民約300人が早朝から駆けつけ、雲間からの初日に決意を新たにした。

 年末に辺野古をめぐって大きな動きが二つあった。

 一つは、防衛省が12月25日、新基地建設の総工費を9300億円、完成までの期間を約12年とする試算を示したこと。沖縄県が指摘してきた軟弱地盤への対応など大幅な計画の見直しをようやく認めた形だ。

工事中止 普天間閉鎖だ

 玉城デニー知事は「普天間飛行場の1日も早い危険性除去という辺野古移設の根拠が失われた」と指摘し、「工事を直ちに中止し普天間を運用停止して危険性を除去」するよう主張した。自民党寄りの松川正則宜野湾市長でさえ「12年は長い」という始末だ。

 さらに、防衛省の見積もり自体が甘く「9300億円で収まらない」と県はみる。約1兆円という空前の公共工事―654億円の東京スカイツリーが14塔、1600億円の新国立競技場が5・8個分、2074億円の那覇空港第2滑走路増設事業の4・5倍もの工費が想定されることに、玉城知事は「こういう公共工事は直ちにやめたほうがいい」「国会での議論を注視したい」と述べた。

 二つ目が、新基地建設工事の埋め立てに使う土砂をすべて県内で調達するよう計画を見直すことがわかった。これまで防衛省は県外の奄美大島、天草、小豆島などから土砂を採取する計画を示していた。しかし、沖縄県が新しく制定、施行した条例によって県外からの土砂搬入規制が厳しくなり、これを回避する狙いだ。

 また不透明な形で随意契約した琉球セメントの土砂見積価格1立方b当たり5370円が市場価格の1・5倍であり、利権がらみとも考えられる。いずれにしても、いくら費用がかかろうがどれだけ工期が伸びようが、政府自民党と儲けられるだけ儲けたいとするゼネコンらによる辺野古新基地疑獄といえる事態だ。

自民・維新のカジノ腐敗

 辺野古とカジノを結びつける事件も明らかになった。カジノを含む統合型リゾート施設事業への参入をめぐって収賄容疑で逮捕された秋元司衆院議員同様に、カジノ誘致をめざしていた県内の自民・維新の国会議員、自治体首長らと中国企業の癒着である。

 賄賂として現金を渡した中国企業「500ドットコム」は、宮崎政久衆院議員(自民党比例九州ブロック、沖縄2区)、下地幹雄衆院議員(日本維新の会比例九州ブロック、沖縄1区)をはじめ松本哲司浦添市長など県内自民党首長らと接触していた。いずれも、カジノに反対する故翁長雄志知事や玉城デニー知事、そして「オール沖縄」に敵対。また、昨年の県民投票を妨害した張本人たちだ。

 「翁長県政のバックに中国がいる」とフェイクチラシをばら撒きながら、自らは中国マネーを手にし、カジノや辺野古移設でぼろ儲けを狙っていた。自民・維新と利権屋らの腐敗が白日のもとにさらされている。

 年初には、辺野古軟弱地盤の改良工事に関する有識者会議委員に東洋建設や不動テトラなど受注予定業者から計570万円もの資金が流れていたことも明らかになった。技術的に不可能とされていた90bもの海底地盤工事に「工事可能」とお墨付きを与えた委員たちに寄付と称して金銭が渡されていた。

 腐敗と汚職まみれで進む辺野古新基地建設。1兆円の税金を投じる大義などどこにもない。直ちに工事を中止し、白紙撤回する以外に道はない。 (N)



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