2020年01月24日 1609号

【川崎市 罰則付きヘイトスピーチ禁止条例が成立 排外主義克服に大きな一歩】

 在日外国人(とりわけ韓国・朝鮮人)に対するヘイトスピーチが深刻な川崎市。昨年12月、市議会が可決成立させた「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」は差別排外主義の克服に向けた大きな一歩だ。

罰則付、濫用懸念も配慮

 ヘイトスピーチ禁止条例は2015年、大阪市で制定されている。違反者には氏名公表という社会的制裁を加えられるようになっているが、刑事罰はない。このため、ありもしない「在日特権」と闘う英雄°Cどりで積極的に氏名公表を望むような連中には効果が薄いとの指摘があった。

 川崎市の条例は次のように定める。

 ―公共の場所において、国または地域を特定し、当該国または地域の出身であることを理由として、(1)居住する地域から退去させること(2)生命、身体、自由、名誉または財産に危害を加えることを煽動または告知する行為(3)在日外国人を人以外のものにたとえるなど著しく侮辱する行為をヘイトスピーチと規定。これらの行為をした者やその恐れがある者に6か月間禁止を勧告し、従わない者には6か月間、禁止を命ずることができる。禁止命令に従わなかった者に対し、氏名公表に加え最高50万円の罰金刑を創設したのが今回の条例最大の特徴だ。排外主義者が開催する集会等に対し、市が会場の使用許可を取り消せる規定も盛り込んだ。

 市当局による濫用への懸念にも最大限配慮されている。禁止勧告〜禁止命令〜氏名公表、罰則と段階を経た手続きとなっていること、市に対し勧告、命令の各段階で差別防止対策等審査会(新たに設置)からの意見聴取を義務づけたことはその例である。氏名公表予定者に審査会での反論権も与えている。

全会一致で成立

 この条例が政治的に重要な意味を持つのは、自民、公明含む全会一致で可決成立したことだ。採決では無所属議員2人が退席したが、自民、公明からも退席者を出さず全員が賛成した。差別排外主義追放の原則を守りつつ、与党も賛成できる内容に条例案を練り上げた市当局の努力も大きい。

 それ以上に力となったのは、ヘイトスピーチ頻発に危機感を抱いた市民の粘り強い闘いだ。カウンターデモで排外主義者を包囲するなどの闘いが、差別を許さない地域作りに大きく道を開いた。

 新条例は、罰金刑の対象を公共空間でのヘイト演説や差別ビラ配布等に限定しており、インターネットを除外するなどの課題を残した。だが氏名公表措置はネットでの差別表現も対象だ。市長の職権によるほか、市民の申し出に基づく運用もできる。市民がこの条例の意義を理解し積極的に活用すれば、排外主義克服へ大きなうねりを作り出せる。

 条例成立を受け、ヘイトスピーチにさらされてきた在日韓国・朝鮮人が記者会見。「私たちを守ると市が宣言してくれた。差別のない社会に向けて、新しい歩みが今日から始まる」と歓迎の声が上がった。

大阪市では氏名公表

 一方、先行して禁止条例を施行した大阪市では、初の氏名公表が行われた。インターネットまとめサイト「保守速報」運営者・栗田香、政治団体「朝鮮人のいない日本を目指す会」川東大了の2名だ。川東は街頭演説で「朝鮮人は変態」などの差別発言を続け、「保守速報」は韓国に対するねつ造・デマ情報を今なお垂れ流し続ける。

 安倍首相が自身のフェイスブックで「保守速報」へのリンクをシェアしていたことも2014年に発覚した。最悪の差別排外主義サイトを首相みずから利用して市民分断をあおり、戦争への道作りに利用している。ヘイトスピーチを根絶するため、2020年を排外主義者のトップ、安倍打倒の年にしなければならない。



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