2020年01月31日 1610号

【自衛隊中東派兵/派兵の常態化から改憲を狙う/P3C即時撤収 護衛艦派遣中止】

 1月17日、自衛隊中東派兵に関する衆参両院の国会閉会中審査が開かれた。

 安倍政権は12月27日、海上自衛隊P3C哨戒機2機と護衛艦1隻、自衛隊員260人の中東派兵を閣議決定。1月11日、海自哨戒機を那覇基地から出発させた。

 派遣の「根拠」は防衛省設置法の「調査・研究」で、国会承認なく自衛隊を出撃させることができるとし、「不測の事態」=戦闘状態になれば武力行使可能な「海上警備行動」を発令する。

理屈さえつけられない

 閉会中審査で、安倍政権は派兵の「必要性」すらまともに説明しなかった。

 河野防衛相は「現在、直ちに日本関係船舶を防護しなければならない状況とは考えていない」「現時点では自衛隊が紛争に巻き込まれる恐れはない」と言う。

 「調査・研究」目的の派遣では、自衛隊は正当防衛以外に武力行使ができない。たとえ「海上警備行動」を発令した場合でも、実力行使し防護できるのは日本船籍に限られる。日本関連船舶の大半を占める外国船籍への攻撃は対象外なのだ。それら関係船舶の危機には、米仏など他国軍に保護を要請するとまで報じられている(12/15毎日)。

 民間船舶を警護せず、紛争に巻き込まれる恐れもないなら、何のために軍用艦を派遣するのか。河野の答弁では必要性は全く不明。派兵のための派兵≠セ。

権益確保と一体の派兵

 安倍が強引に中東派兵を進めるのは、権益確保と軍事力が一体だからだ。

 まず、中国包囲網の強化だ。中東への護衛艦の航海は、日本から東シナ海〜南シナ海〜インド洋〜アラビア海へと至る。これは、中国の「一帯一路」戦略に対抗する「インド太平洋構想」の一部で、中東からのエネルギー輸送路「シーレーン」に重なる。このルートで自衛艦を「同盟国」に寄港させながら同盟関係=中国包囲網を誇示する。

 第2に、中東・アフリカ地域で軍事的存在感を強めることだ。中東を訪問した安倍は、派兵にあたり、オマーンのサラーラ港とUAE(アラブ首長国連邦)のフジャイラ港に寄港するとした。海自部隊はオマーン湾、アラビア海北部、アデン湾を1年間活動海域とする。2港を継続的な補給基地にすれば、ジブチの恒久基地に加えて中東での軍事拠点を拡大することになる。

 日本政府は今回、有志連合に加わらず、独自派兵にこだわった。それは、共同作戦は行っても有志連合に必ずしも縛られないことを意味し、他国が引き揚げた後も、ジブチの恒久基地のように自衛隊が居座り続ける契機ともなる。

犠牲は常に民衆

 だが、戦闘部隊の派兵は、常に戦争の危機をはらむ。

 米国とイランの緊張の下でウクライナ機撃墜事件が起きたように、不測の事態の危険性が付きまとう。

 偶発的な「衝突・事件」が引き金となって米・イラン戦争となった時、「重要影響事態」として戦争法を発動すれば「後方支援」=兵站(へいたん)を担うことで参戦の可能性は一気に広がる。それは、安倍が切望する9条改憲への地ならしとなる。

 こうした戦争挑発行為は、民衆の生命・安全を脅かす害悪そのものだ。自衛隊員も戦争政策の「駒」として危険にさらされている。イラン、イラクでは、生活破壊に憤り蜂起した民衆が、戦争の危機を口実に抑圧されている。経済制裁はさらに生活を苦しめる。犠牲者は常に民衆だ。

 事の発端は、トランプのイラン核合意離脱にある。米国の核合意復帰、交渉によるイランの核開発抑止が戦争回避の第一歩だ。

 派兵拡大をたくらむ安倍の戦争政策にストップをかけ、自衛隊の即時撤収、派遣中止の声を広げよう。



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