2020年01月31日 1610号

【伊方原発再び運転差し止め 再稼働に道理なし】

 広島高裁(森一岳裁判長)は1月17日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めた仮処分申請の即時抗告審で、運転してはならないとする決定を出した。福島事故後、原発運転停止を認める司法判断は5件目。伊方原発では2度目となる。

 仮処分を申し立てたのは、原発から30〜40`圏内にある島しょ部(山口県東部)の住民3人。山口地裁岩国支部が19年3月差し止め請求を却下したため、即時抗告していた。

 争点となったのは、地震(活断層)と火山事象(阿蘇山の噴火)の影響の2つ。

 佐田岬半島沿岸の活断層について決定は、四電側は「佐田岬半島北岸部に活断層は存在せず、活断層が敷地に極めて近い場合の評価は必要がないと判断して」地震動評価を行っていないが、実際には活断層について十分な調査をしておらず、問題ないとした原子力規制委員会の判断には誤りがあったとした。

 火山事象について決定は、まず規制委の「火山ガイド」の検討対象火山(阿蘇山)の噴火時期および程度が相当前の時点で予測できるという部分は不合理であり、過去最大の噴火規模を想定して到達可能性を判断することになるという。

 その上で決定は、破局的噴火を想定した法規制や防災対策が原子力規制以外の分野で行なわれている事実はないから、「立地不適」とするのは社会通念に反するとしつつ、影響評価としては、破局的噴火に至らない程度の最大規模の噴火(四電が想定する噴出量の3〜5倍)を想定すべき。四電の噴出量の想定は過小で、それを前提とした規制委の判断も不合理とした。

 そして、噴火の時期や規模はせいぜい数日から数週間前にしか予測できないから保全の必要性があるとして運転停止を命じた。

 伊方原発3号機は、現在定期検査で停止中だが、四電が不服申し立ての手続きを行っても運転が4月以降にずれ込むことは確実だ。

司法の役割果たす

 弁護団は「行政から独立した司法の役割を見事に果たした」(声明)と評価した。司法の原発運転停止判断5件目の事実は、反原発世論の前に不当な政治判決も容易ではないことを示す。

 今年から来年、鹿児島の川内(せんだい)2号機(5月)を皮切りに福井の高浜3・4号機、大飯3・4号機が「テロ対策施設」の未完成で運転停止となる。再稼働を許さず、廃炉に追い込もう。



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