2020年02月07日 1611号

【未来への責任(291)遺骨問題意見交換会で成果】

 1月21日に遺骨問題の厚労省・外務省意見交換会が開かれた。衆院第2議員会館には会場いっぱいの100名が集まった。日韓のメディア30名以上、紹介議員の近藤昭一議員をはじめ7名の国会議員、多くの議員政策秘書も参加し、熱気あふれる2時間の会となった。

 意見交換会は、遺骨収集推進法施行から4年を迎えたが沖縄でなかなか進まないDNA鑑定(特に遺骨鑑定)への提言、韓国人の遺骨返還問題を焦点に据えた。要請団体は、沖縄のボランティア団体ガマフヤー(ガマを掘る人)と太平洋戦争被害者補償推進協議会、戦没者遺骨を家族のもとへ連絡会の3団体。共同で要請するのは初めてだ。

 冒頭に大きな成果があった。厚労省から、沖縄で保管される手足の遺骨700体について今年3月末までに検体を採取し4月から鑑定を開始すると報告されたこと。130名の遺族の追加申請(申請は1000名になる)があったこと、慰霊塔など17か所に今後鑑定の対象となる遺骨があることが報告された。

 ところがここで問題が生じた。700体の遺骨から検体を採取するのは、専門家ではない厚労省職員だと言う。「専門家が行うべき」と強く追及され、ガマフヤーからは「沖縄の科学技術大学院大学などの鑑定に前向きに協力するところを拠点に置いて進めるべき」と提案された。厚労省は「職員は素人でも、DNA鑑定できないとわかる骨もある」などと発言し、国会議員から「素人がすべきことではない」と抗議を受ける始末だった。

 また、収容した遺骨の取り扱いについて、焼骨問題が浮上し大きな議論になった。硫黄島では回収した1万人の遺骨のうち500体以外は焼骨したと言うのだ、韓国のマスコミでも驚きをもって報道された。厚労省は焼く理由を「遺族感情への配慮」と釈明したが、参加した遺族からは「誰もそんなことを望んでいない。焼骨への遺族の承諾を得ていない」と次々と怒りが表明された。

 今回は外務省も出席し、米日間で共同鑑定を進めるタラワ島で1体の遺骨が韓国人遺族と合致したことの報告を韓国外務省より受けたことを認めた。沖縄戦の韓国人遺族のDNA鑑定参加についても「適切に検討する」との回答を引き出せた。また外務省も、返還に向けて韓国外交部と引き続き協力する意向を示した。

 日韓関係の好転に大きな一歩を築いた取り組みだったと思う。

(「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会 上田慶司)

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