2020年02月07日 1611号

【たんぽぽのように (11) 戦争と平和、そして連帯 李真革】

 韓国の国防部は1月21日、「中東地域で自国民と自国船舶の安全を確保するため、ホルムズ海峡に部隊を派遣する」と発表した。アフリカ・ソマリア近海に派遣されている清海(チョンへ)部隊の活動範囲を一時的に拡大する対応で、国会の同意は必要なくすぐに活動を開始することができるとした。

 韓国がホルムズ海峡に派兵すれば、国連などの合意のない米国の要請によるものとしては2004年のイラク派兵以来初めてとなる。この派兵に関する世論は賛成反対に分かれ沸騰しているが、多くの専門家は、政府が派兵を検討する理由は在韓米軍の防衛費分担金交渉と南北関係の進展に米国の協力を得るためだと言う。

 米軍は1月3日、イラク領内でイラン革命防衛隊司令官ソレイマニを殺害した。米国は「差し迫った脅威」による除去作戦だと説明したが、トランプ大統領は「差し迫った脅威が何なのかどうかは重要ではない」と主張した。2003年、当時のブッシュ大統領は、イラクに「大量破壊兵器」があるとしてイラク戦争を開始。しかし、米国が「大量破壊兵器」の存在を最後まで立証しなかったことを私たちはよく知っている。

 大韓民国憲法第5条は、韓国が国際平和の維持に努めて侵略戦争を否定すること、国軍が国家の安全保障と国土防衛義務を実行する必要があることを明記する。したがって、国軍の義務は国土防衛であり、海外に派兵する場合の唯一の名分は「国際平和維持に貢献する」のみとなる。政府が検討している清海部隊の作戦水域変更案は、憲法第60条第2項が明示する国軍の海外派兵の国会同意権を否定する行為である。

 京都と大阪を行き来する途中、JR吹田駅を通ると、朝鮮戦争のさなか1952年に起きた「吹田事件」と、その裁判中に朝鮮人犠牲者に対する黙祷を要求した「吹田黙祷事件」を思い出す時がある。兵器と各種軍需品を載せた輸送列車を10分遅延させれば、その時間だけでも戦争による犠牲者が減る、と鉄道の枕木を切ったり、列車信号機に石を投げたりした人々。戦争と虐殺に反対し、連帯してともに闘った人々。

 イラクに派兵した2004年の盧武鉉(ノムヒョン)と2020年の文在寅(ムンジェイン)。2つの民主党政権が、吹田駅に集まった人々のような考えを持っていないという事実だけはよく分かる。

(筆者は市民活動家、京都在住)
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