2020年02月14日 1612号

【新型肺炎に便乗する自民・維新/「改憲、緊急事態の実験台」】

 新型コロナウイルスによる肺炎拡大に便乗し、憲法を「改正」して「緊急事態条項」を創設すべきだとする意見が自民党などで相次いでいる。

法律でできなければ改憲

 発端は中谷元・元防衛相の発言だった。中谷は強制入院措置の件に触れ、「法律を守り人が死ねば元も子もない。非常事態や緊急事態の場合は検査、隔離、監視、拘束する必要がある」「法律で対応できれば一番いいが、できないとなれば改憲議論が必要だ」(1/29産経)とぶち上げた。

 翌30日には、伊吹文明・元衆院議長が「緊急事態の一つの例。憲法改正の大きな実験台と考えた方がいいかもしれない」と続いた。そして、31日に行われた自民党の新型肺炎対策本部の会合では「憲法改正への理解を国民に求めるべきだ」との声が相次いだ。

 国会では日本維新の会が積極的に動いている。馬場伸幸幹事長は「感染拡大は国民には大きな不安だが、いいお手本になる」(1/28衆院予算委員会)と述べ、安倍首相の見解をただした。首相は「今後想定される巨大地震や津波等に迅速に対処する観点から憲法に緊急事態をどう位置付けられるかは大いに議論すべきものだ」と応じた。

ショックドクトリン

 自民や維新がやっているのは典型的なショックドクトリンである。大きな災害等で人びとが茫然自失になっている状態、あるいは恐怖と不安から正常な判断ができなくなっていることに付け込んで、通常では難しい「改革」を一気に進める手法のことだ。

 緊急事態条項は、自民党が策定した改憲4項目の一つ。2012年にまとめた党の改憲草案では、首相が武力攻撃や大規模災害などで緊急事態を宣言すれば、法律を成立させなくても個人の権利を制限できるとした。簡単に言うと、国家の一存で基本的人権を奪えるようにしたいのだ。

火事場泥棒の手口

 独裁国家に道を開く危険な条項ゆえに、多くの人びとが警戒し、反対している。そこで自民や維新は今回の新型肺炎問題を利用し、容認感情を広めたいと考えた。感染拡大に対する不安感をテコに、「みんなの安全を守るためなら、人権の制限もやむを得ないよね」という意識を浸透させようとしているのである。

 伊吹が「実験」、馬場が「お手本」という言葉を使ったことを覚えておいてほしい。連中の頭にあるのは「今回の事態を改憲にどう結びつけるか」のみ。市民の健康・安全は眼中にないのである。

 改憲パートナーの公明党の幹部でさえ「火事場泥棒的」とあきれる卑劣な策動を許してはならない。

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