2020年02月14日 1612号

【日韓で描いた『明けの朝日』/済州道庁前に12b絵巻を展示】

 福島原発事故被害などをテーマとした作品群のある若手画家山内若菜さんがZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)と韓国の代案文化連帯が企画した「日韓ユース平和参加団in済州」(1/10〜1/13)に参加し、ワークショップをリードした。「新たな創作意欲につながった」と言う山内さんの投稿を掲載する。

 韓国と日本の青年が共同で絵を制作するワークショップを行ないました。

 朝日をイメージした黄色い丸をいくつも描いた幅2メートル、長さ12bの和紙を準備。その朝日を下地に、各自がフィールドワークの中で一番印象に残っているものを描いて壮大な絵巻を完成させます。テーマは「希望の太陽&夜明け」

国境を超えた一体感

 12日、参加団最後の夜。ワークショップの始まりです。筆を手に考え込む人も。描き始めれば楽しそう。完成後、一人ひとり自分の作品を解説します。

 4・3事件を象徴する椿の花と北斗七星を描いた韓国の女性は「平和には道はない。迷った時、北斗七星は進むべき方角を示してくれる。自分自身が北斗七星となりたい」と語りました。その椿の横に、向き合うように椿を描いた日本の女性は「過去の歴史に向き合っていきたいとの思いで描いた」と言いました。「過去を直視することで日韓の本当の意味での和解が生まれることを示しているようだ」との感想も出ました。

 夜明けの空を描いた日本の男性は「夜明けの空が台風のようにも見えた。台風は中心に近づくほど風が強くなるが、中心は風が吹いていない。私たちも真実に近づこうとすると強風にあうかもしれないが、そこを抜けて中心にたどり着きたい」と語りました。

 気がつけば日付が変わっていました。国を超えて一緒に絵を描くことができた体験に、感動を覚えました。共通の思いをもとに大きな絵を共同制作していく。お互いが進化し社会を変えていく。そんな壮大な絵画世界観が私の頭の中の地球儀を宇宙へと誘う瞬間でした。

「一瞬の永遠展」実現

 そして13日。完成作品の展示です。

 済州道庁前での記者会見。2つに分割した作品を一つにしたい。「一瞬の永遠展」がしたいと思わず叫びました。「2枚を合わせ一つにして、全体が入るように道の向こうから写真を撮ってください!」。私らしくない瞬間でした。

 ワークショップで描いた絵は行き場を失うことが多い中、描いたら終わりではないと思いました。その絵で世界にアピールする必要がある。この時のわたしの心の叫びは、「みんな見てほしい!一緒に描いたこのすごい絵を見てほしい!」

 道庁の出入り口を封鎖する展示も、わずかの間なら黙認されたようです。みんなが絵と一つになって道庁を包みこんだ時に「わあーっ」という、喜びの音というか、何語ともいえない叫びが一つの声になった時、展示が終了しました。

 「済州道庁を包む『明けの絵巻』日韓合同展」

 そんな合同展が開催できたも言えるような気持ちでした。解団式で、絵巻の片方を韓国へ贈りました。一瞬の交流、経験を永遠にした作品、二つで一つの作品になっていることを伝えました。「絵を描き思いを発表することで話すきっかけにもなり、普段言葉がない方からも良い意見が出た」。そんなお話を頂きました。

命をテーマに描く

 絵を描く人は、内面を追究し、個展だけで個性を発することを好みます。でも、絵描きだから見たいもの、見たい人、つながりたい人がいる。その人たちと一緒に出来ることもあるのではないか。権力側の許せない横暴に対し、自然の美しさを描き残し記録し記憶させることが大切だと思う。

 昨年の日韓ユースは沖縄、今年は済州。素晴らしい絵画のテーマです。そこに一貫してあるのはお金より命、自然の美しさを含めたそこにある命がテーマだと気づきました。

 過去から続くその虐げられ、追いやられた存在。今あるまさにその自然を含め命を記録し、記憶したい。

 岩のように私は命を描こう。岩のように座り込むように絵を描き続けよう。その下には、次世代へ続けたい多くの大きくて重い思いがある。

 絵が好きなだけの私だったけど、福島、沖縄、ロシア、韓国、それぞれがテーマを含み、成長させてもらえている。若い人が企画するZENKOのおかげで、素晴らしいテーマを教えてもらえたように思います。

 さあ、新しい絵を描こう!そんな希望に満ち溢れている現在です。







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