2020年02月21日 1613号

【ミリタリーウオッチング 宇宙軍¢n設 競い合う戦争屋たち/スターウォーズを許すな】

 2020年代、米国が重要な軍事課題とする一つに「宇宙軍」(Space Force)の設立がある。すでに米国には「宇宙コマンド」(Space Command)と呼ばれる組織があるが、特定の目的のための統合軍で、陸軍や海軍などのような独立した軍ではない。

トランプが「指令」

 大統領ドナルド・トランプは2019年2月19日、「宇宙政策指令4」で国防長官に宇宙軍設立のための立法提案策定を要求。同3月1日、米国防総省は宇宙軍の創設にかかる立法提案を議会に提出した。

 12月20日、トランプの国防権限法署名によって「宇宙軍創設」とメディアは大きく報じたが、これは正しくない。約1万6千人の部隊は空軍省の下にあり、合衆国法典改定が必要な正式の軍種には今もなってない。

 トランプはもちろん陸・海・空3軍などと全く同格の宇宙軍をめざしている。議会では意見が分かれ、承認には至っていない。だが、これが通れば宇宙が戦場になる日≠ヘ悪夢では済まない現実となりかねない。

 米国以外の国も近年、宇宙軍拡に力を注いでいる。中国は1980年代から宇宙開発を本格化し、通信衛星や地球観測衛星などを頻繁に打ち上げている。07年には自国の退役した衛星を標的とした衛星破壊試験を実施。宇宙をめぐる緊張と警戒が強まった。

 日本はどうか。69年の国会決議では「日本における宇宙の開発・利用は『平和の目的』に限り行うこと」とされ、防衛庁(当時)や自衛隊が宇宙開発、衛星の利用を行うことを認めなかった。

安倍も「作戦隊」

 しかし、03年から事実上の偵察衛星「情報収集衛星」の打ち上げが始まり、08年の「宇宙基本法」の成立でこの原則は崩されていった。それまでの制限がなくなり、「防衛目的」の通信衛星や偵察衛星など軍事衛星の研究・開発が大々的に進められるようになった。

 とりわけ情報収集衛星は10年代に9機が打ち上げられ、今年も衛星が得たデータを地上に中継する「データ中継衛星1号」打ち上げが予定されている。また、防衛省と宇宙航空研究開発機構は、すでに一体化した宇宙の共同軍事研究を実施するありさまだ。そして一昨年、安倍政権は自衛隊に「宇宙作戦隊」という組織を新設すると公表。拠点は航空自衛隊府中基地となる。

 戦争屋たちによる宇宙の戦場化を許さない闘いが、私たちに問われている。

藤田 なぎ
平和と生活をむすぶ会

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