2020年02月28日 1614号

【米大統領予備選で勝利発進/貧困・格差の新自由主義政治を終わらせる/民主主義的社会主義政策の実現へ】

 11月の米大統領選に向けた民主・共和両党の党員集会・予備選挙が始まった。全体の流れを決めるといわれる初戦2州で、民主党は民主主義的社会主義者バーニー・サンダース上院議員がトップを争っている。トランプ再選を阻止し、貧困と排外主義がはびこる社会に民主主義を回復させ、社会主義的政策を実現する可能性が立ち現れた。最終的勝利を得るには世界中で新自由主義と闘う人びとの支援が必要だ。

サンダースが先行

 民主党の大統領候補は7月の全国大会で決まる。州ごとに選出される一般代議員3979人と党幹部などの特別代議員771人が投票する。党員集会か予備選挙かは党の州支部が決めるが、各候補者は得票率に応じて代議員を獲得できる仕組みだ。

 アイオワ州党員集会(2/3)、ニューハンプシャー州予備選挙(2/11)が終わった段階で、バーニー・サンダースがピート・ブティジェッジ前サウスベンド市長とトップを争っている。

 2月22日ネバダ州党員集会、29日サウスカロライナ州予備選挙の後、14の州で予備選挙などが行なわれる「スーパーチューズデイ」(3/3)と続き、3月中に一般代議員の65%が決まる。

 党員間の議論を繰り返し2度の投票(挙手)を行う党員集会は、長時間を要するため実施州は少ない。アイオワ州では約1700か所で党員集会が行われたが、結果を集計するアプリに問題が生じるなど確定がずれ込んだ。民主党州支部の発表では、サンダースは26・1%で12人の代議員を得たが、ブティジェッジは26・2%で14人となっている。

 ニューハンプシャー州予備選挙では、サンダースは25・7%、ブティジェッジを3600票余り上回るが、代議員は9人で同じだった。

争点を間違えるな

 トランプの再選を阻むために何を掲げるべきか。サンダースとトップを争うブティジェッジは、ハーバード大、英オックスフォード大卒、大手コンサルタントの勤務経験がある「若きエリート」。元大統領ケネディや前大統領オバマを重ねる支援者もいるという。マスコミは、同性愛者であることを公表したブティジェッジを「多様性の象徴」、不寛容なトランプの対抗馬と持ち上げている。

 だが、4年前トランプが勝利した理由を考えればわかる。グローバル資本の支援を受けたオバマやその継承者ヒラリーなど「エスタブリッシュメント(既得権益勢力)」に対する白人労働者などの怒りを移民労働者などに向けさせ、排外主義が「解決の道」だと刷り込んだ結果だった。

 変わらない現状に対する怒りがトランプへの「期待」につながった。トランプとの争いに一般的な「多様さ、寛容さ」など何の役にも立たない。貧困・格差の是正、排外主義ではない民主主義の回復をはかる具体的な政策が必要だ。それが人びとの怒りを解決する唯一の道なのだ。

若者の支持は5割

 サンダースが掲げた政策は多岐にわたるが、いずれも資本の支配からの解放、真の自由獲得を訴えている。ウェブサイトにある「21世紀の経済的権利の章典」は「収入、人種、宗教、性別、出身国、性的指向に関係なくすべての人びとの命に関する権利を保障する」ことをうたっている。「熱があるのに職場に出なければならない。これが自由か」と動画が訴えかける。

 政策の真っ先に挙げられたのは「誰にとっても快適で安全なアメリカ」。トランプの移民締め出し政策を180度転換させる。また、すべての人に権利として医療を保障する「メディケア・フォー・オール」、約4500万人の学生の総額1・6兆ドルに上るローン返済免除など「カレッジ・フォー・オール(大学教育の保障)」、労働者の権利保護を掲げる「職場の民主化」などが続く。

 こうしたサンダースの政策に、「革命を起こすのか」「非現実的だ」と共和党のみならず民主党内からも批判が出ている。グローバル資本の支援を受ける民主党指導部はサンダースつぶしに必死になることだろう。だが、「中道・穏健」がもたらしたものは新自由主義の擁護、推進だった。この事実に憤る多くの若者がサンダースを支持している。出口調査では10代20代の支持は5割と極めて高い(図)。


空前の草の根運動が

 各州の党員集会・予備選挙前には近郊都市からバスが仕立てられ「バーニー・ジャーニー」(日帰り戸別訪問活動)への参加が呼びかけられる。ニューハンプシャーでは「8日だけで有権者の20%に相当する世帯のドアをノックした」(2/11読売)。

 サンダースはニューハンプシャーの勝利集会で「雨の中も雪の中も戸別訪問に回った数千人のボランティアに感謝する」と口にした。そして「勝利を手にする要因は、全国にわたる数百万人に上る空前の草の根運動だと信じている」と述べている。

 経済でも、健康でも、環境でも恐怖からの自由を得るには、資本主義体制を変えなければならない。民主主義は弱肉強食の資本主義の下では実現できない。全米最大の社会主義団体DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)をはじめ多くの草の根運動がサンダースの政策実現に全力を挙げている。

 世界中で新自由主義政策と闘う人びとの支援がサンダースの最終的勝利を後押しする。世界が変わる。



 
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