2020年03月06日 1615号

【沖縄辺野古 政府が隠していた 最深90mの軟弱地盤 護岸崩壊の危険性も】

 「砂上の楼閣」という言葉がある。巨大な辺野古新基地建設計画は、まさにその言葉通り、基礎がしっかりせず施設を建てても長く維持できないことが誰の目にもあらわになった。

暴かれた調査結果

 2月12日衆院予算委員会で、名護市大浦湾側の埋め立て予定地に最深約90bに達する軟弱地盤が存在すると政府自身がつかんでいた事実を共産党赤嶺政賢議員が追及した。防衛省が昨年3月国会に提出した土質調査報告書などに記載されていたのだ。

 土木技師で沖縄平和市民連絡会の北上田毅さんが2018年以来、情報公開請求で見つけ指摘していた海底ボーリング調査結果「N値(土の硬さを示す指標)ゼロ」、いわゆる「マヨネーズ状の軟弱地盤」。防衛省はかたくなにその存在を認めなかった。

 昨年12月、ようやく軟弱地盤改良工事の必要を認め、総工費計9300億円、工期12年以上の見通しを示した。沖縄防衛局は3月にも沖縄県に当初の設計計画を変更する申請を提出するといわれている(2/14読売)。

 しかし、検討されている防衛局の設計変更の内容は、この最深90bに及ぶ軟弱地盤対策にはなっていない。防衛局は、70bまでの軟弱地盤の存在を認めた際、地盤改良は最新の施工技術で対応可能、それより下は硬い岩盤のため工事の必要はないと説明してきた。ところが、政府資料に70bを超える軟弱地盤の存在が記されていた。都合の悪いデータは隠ぺいし、口を閉ざし続けていたのだ。

関西空港では4m沈下

 地質学が専門の立石雅昭・新潟大名誉教授は「安全な施工は保証できない。このまま施工すれば盛り土が崩れ、護岸が崩壊する恐れがある」と指摘した。軟弱地盤改良工事計画の根本を覆す調査データが意図的に隠されていた。これほどでたらめな設計変更申請。玉城デニー県知事はいうまでもなく認めない。

 軟弱地盤は改良工事しても、完成後必ず地盤沈下が生じる。大阪湾内泉州沖の埋め立て工事を経て26年前に開港した関西空港。第1ターミナルビルで約3b、第2ターミナルで約4bの地盤沈下が起り、現在も毎年10a以上の沈下が続いている。ビルは「不同(不均等な)沈下」に対応するためブロックごとに独立し、多数の蛇腹で接合。約900本の柱にすべてジャッキが備えられ沈下分を押し上げる作業を毎月施している実態がある。

 関西空港の埋め立て海域は、海面から海底まで20b、軟弱地盤も海底から20bでその下は硬い地層だ。大浦湾の場合は、海面から30〜40b下に海底があり、そこから40〜50bの軟弱地盤層が広がる。単純に計算しても、関西空港の2倍以上の地盤沈下が発生することが考えられる。

 かつて誰も経験したことのない異次元の大規模工事だ。海面から70bに及ぶ工事で「マヨネーズ状」の地盤を改良しても、さらにその下に20bの軟弱地盤。不同沈下に加え、護岸崩壊の可能性まで指摘されている。にもかかわらず、それを無視して工事に突入しようとする危うい事態なのだ。


利権構造にノー

 安倍政権にとって「辺野古新基地建設」は至上命題。挫折は政権そのものを揺るがす。防衛省はじめ官僚たちは都合の悪いデータを隠してでも、後先を考えず無理やり突き進んでいる。

 同時に、辺野古という大規模工事に利権構造が絡む。完成まで何十年かかろうと、大成建設など大手ゼネコンにとっては莫大な利益の源泉だ。完成の目途もまったく立たない工事に1兆円もの国家予算を注ぎ込む。

 新基地もろとも安倍政権を一刻も早く退陣させなければならない。現地の阻止行動と結ぶ全国の闘いは待ったなしだ。   (N)

 
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