2020年03月06日 1615号

【読書室/兵器を買わされる日本/東京新聞社会部著 文春新書 本体850円+税/大軍拡の内実追う調査報道】

 本書は、安倍政権の下で「聖域化」され伸び続ける軍事予算の内実に迫ったものである。

 安倍政権の進めてきた軍拡路線は、トランプ政権の登場とともにさらに拍車がかかった。貿易赤字解消を求めるトランプに、安倍は米兵器の「爆買い」で答えた。米国兵器を同盟国に「提供」する「対外有償軍事援助(FMS)」を通じた兵器購入を日米首脳間で次々と合意。防衛省、自衛隊幹部ですら必要性に疑問を持つ高額兵器、装備の購入を続けている。

 しかも支払額は見積もりの数倍まで膨れ上がり、維持費も米側に言い値で要求される。2基1757億円イージスアショアや1機110億〜180億円に膨れるF35戦闘機はその象徴だ。多額の兵器ローンは関係予算全体を圧迫し、他の国内兵器企業への支払い延期まで要求する始末。その結果、本予算への概算要求から米側への支払い項目を外し、次年度補正予算に組み込むという姑息な手段で軍事費拡大をごまかす。19年度5・26兆円も実際は5・7兆円というのが実態だ。

 本書は、「辺野古ありき」の新基地建設の内実も暴露する。政府は16年には大浦湾の軟弱地盤を把握していたにもかかわらず2年間も隠し続け、建設そのものの見通しもないまま土砂投入を強行。地盤強化が可能とした建設コンサルタント会社には防衛省幹部が天下っており、その報告は信用できない。軟弱地盤問題は最近ようやく大手メディアも取り上げ始めたが、こうした事実を地道に追ってきた姿勢は貴重だ。

 本書から、安倍軍拡の本質である利権構造や隠蔽を暴く調査報道の成果を見ることができる。  (N)
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS