2020年03月06日 1615号

【3月9日 福島県の家賃2倍請求撤回求め原発避難者が提訴 支援する会結成へ】

 3月9日、国家公務員宿舎に住む原発事故避難者が福島県を相手取り東京地裁に提訴する。

追い出しは許さない

 昨年3月、福島県は一方的に継続入居制度(有償)を打ち切り、行き場を失った区域外避難者に対し「不法占拠状態」と称して、それまでの使用料の2倍にあたる損害賠償金を請求した。経済的精神的に追い込まれる避難者10人は「原発事故で避難した私たちは何も悪いことをしていない。生活基盤である住宅を追い出すのは人道的にも許されない。経済的精神的に追い詰める2倍請求は撤回してほしい」と訴え立ち上がった。

 福島県が損害賠償の法的根拠とするのは2017年4月に避難者との間で結ばれた「使用貸付契約」第18条の規定。しかし契約は、同年3月の住宅無償提供打ち切り後、他に行き場のなかった避難者がサインする以外にない状況で結ばせたもの。しかも契約内容・条項の説明は一切なく、契約書は郵送され返送が求められる代物だった。その契約制度も19年3月で一方的に終了。ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)による「継続入居、個別事情に寄り添った対応策」の要請も無視し、一律に懲罰的2倍請求を行った。

避難者全体の救済制度へ

 原発避難者救済に自然災害を想定した災害救助法を適用すること自体無理がある。本来なら、福島事故を契機に人災・原発事故に対応した、住宅確保を含めた法律・制度が整備されなければならない。17年の災害救助法適用終了による住宅無償提供打ち切りは、避難の権利をうたった「子ども・被災者支援法」、国際人権法に反する。法・制度ができていないツケを避難者に押しつけて「なかったこと」にしようとするのが今回の事態だ。提訴は、「個人責任」へのすりかえを許さず、避難者全体の救済制度確立につながる闘いとして意義が大きい。

 東京・東雲(しののめ)住宅などに住む原告は、▽病院通いや精神疾患で正規の仕事につけず低収入▽都営住宅の応募資格すらない▽応募しても落選している▽貯金を切り崩して底をついた―など高い家賃の民間賃貸住宅に引っ越すめどが立っていない世帯。不当な2倍請求は撤回し、安心して生活できる住宅を早急に保障するのが行政の役割だが、逆に精神状態を悪化させ、生活保護世帯に追いやっているのが実態だ。

 3月9日には、原告を勇気づけ裁判闘争に勝利しようと「原発事故避難者『2倍請求』撤回訴訟を支援する会」がスタートする。午後1時の提訴後、井戸謙一弁護団長、原告らが記者会見。3時半から衆院第2議員会館第1会議室で提訴報告・支援する会結成集会が開かれる。支援する会加入も呼びかけられている(年会費個人3000円)。

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