2020年03月13日 1616号

【声を上げれば社会は変わる/高等教育無償化プロジェクト/反貧困全国集会2020より】

 「当事者の声を聞け!!」をテーマに、自己責任社会を乗り越え、希望のもてる社会実現の展望を語り合おうと2月15日、都内で「反貧困ネットワーク全国集会2020」が開かれた(主催―同実行委員会)。学生グループ「高等教育無償化プロジェクトFREE」岩崎詩都香さんの報告を紹介する。

 昨年5月、「大学等における修学の支援に関する法律」が成立した。授業料免除枠や給付型奨学金支給枠の拡大が盛り込まれ、メディアは「大学無償化法」と呼んだ。岩崎さんは「前進した面もあるが、同時に問題点もある」と指摘する。

 世帯年収270万円未満は授業料全額免除で給付型奨学金も充実するが、それ以上380万円未満は3分の2または3分の1免除で給付型奨学金の額も減る。「年収で区切って“支援が必要な人”“必要ではない人”を分けていることは問題。対象者も少ない。消費税増税分を財源にすると法律に明記したのは、財源を理由に支援の対象を増やさないつもりなのだろう」

 これまで各大学で授業料を減免されていた学生(最大2・4万人)が減免を受けられなくなる懸念もあった。政府は、在学生については支援を継続すると発表したが、来年度以降の新入生が減免対象でなくなる可能性は残っている。

 「学生・保護者の苦しさを生み出している一番の原因は高学費。その学費の値下げに踏み込んでいない。学費を上げている大学もある。根本を解決しようとする姿勢がない」。岩崎さんはきっぱりと批判した。

 FREEでは、高学費に苦しむ学生のリアルを可視化するために実態調査アンケートを開始し、大学・短大・専門学校生8000人以上から回答を得た。そこからわかるのは「学生が期待をもって学びに取り組んでいること、高い学費が可能性を奪っていること、奨学金の返済に恐怖を感じていること」だという。

 昨年秋からは「授業料減免を削らないで」「学費を値上げしないで」「英語民間試験導入の中止を」「三浪以上も支援対象に」とラリーを重ねてきた。英語民間試験は高校生たちが声を上げ、世論が喚起されて導入延期に。岩崎さんは「私の通う東京大学でもこんなことがあった」と話す。

 新制度により年収基準が引き下げられると、東大独自の授業料減免を受けている学生約600人の半数の支援額が減少する。東大FREEとして減免水準維持を求める署名を500筆以上集め、副学長に届けた。数日後、大学側が減免制度の存続を発表。「現時点では学費値上げは考えていない」とも表明した。「友達も『ほんとにありがとう』と。救われる学生がたくさんいると思う。他の大学のFREEメンバーにも動きは広がっている」。岩崎さんは顔をほころばせる。

 FREEメンバーは近くソウルを訪問する。給付型奨学金を受ける学生を2011〜16年の5年間で約12万人から約120万人へと10倍に増やした韓国の「大学登録金半額化運動」に学ぶためだ。

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