2020年03月20日 1617号

【1617号主張/福島原発事故と新型コロナ/政府のウソが命を脅かす】

安倍の原発事故責任

 東日本大震災と福島原発事故から9年。政府は3月11日の追悼行事を新型コロナウイルスの感染拡大を理由に中止した。だが、未曾有の原発災害が国策によってもたらされた人災であることを忘れてはならない。

 事故当時は民主党政権だったが、原発政策を推進してきた歴代自民党政権の責任は極めて重い。特に、安倍晋三首相には直接の責任がある。第一次安倍政権時代の2006年12月、巨大地震発生時の津波による原発電源喪失の可能性を問われた安倍首相は、政府答弁書で「我が国においてそのような事例はない」と黙殺したからだ。

 世界に向けて大ウソもついた。オリンピックの招致演説で「原発はコントロールされている」と言い放ったのだ。実際には原発事故の収束は見通せず、「完全にブロック」したはずの放射能汚染水の海洋放出をたくらんでいる。

 それなのに、東京オリンピック前に「事故は終わった」ことにしたい安倍政権は、補償打ち切りとリンクした帰還政策を推進。避難者への住宅補助をストップするなど原発被災者を切り捨ててきた。

コロナ対策も同じ

 オリンピックを優先したごまかしは、現在の新型コロナウイルス対策でも見てとれる。全国で感染者が多発し始めても、政府は警戒レベルの引き上げを見送り続けた。政府の専門家会議を仕切っている国立感染症研究所の関係者たちも、感染拡大は食い止められているという政府の言い分を支持してきた。

 政府のウソに利権集団と化した御用学者がお墨付きを与える―。まさに福島原発事故と同じ構図のインチキ劇場が新型コロナウイルス対策でもくり返されているのである。

緊急事態宣言許すな

 「桜を見る会」問題であらわになった国家私物化への批判に感染対策の失態が追い打ちをかけ、内閣支持率は急落した。危機感を抱いた安倍首相は「強いリーダーシップ」を印象づけようと、全国一斉休校要請や中国・韓国からの入国制限を強行した。科学的根拠のないパフォーマンスだ。

 そして、自らの手で「緊急事態宣言」を出すための立法措置を急いでいる。個人の移動の自由や集会の自由などを制限できるようにするというものだ。安倍改憲の柱のひとつである「緊急事態条項」の先取りだ。感染対策に名を借りた改憲への地ならしを認めるわけにはいかない。

 原発賠償訴訟原告の避難者は、政府の新型コロナ対応を「調べない、数えない、助けないのが国」と批判する。福島原発事故の時と同じということだ。嘘つき政権は市民の命を守らない。人権を踏みにじる。一日も早く辞めさせるしかないのである。

   (3月9日)
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