2020年04月03日 1619号

【「私の責任で万全の対策とる」?/支援にならないコロナ経済対策/働く者の生活を守れ】

 新型コロナウイルス対策の目標とすべきは、まず死者を出さないことだ。もう一つ、政府がやるべきことがある。「自粛」による生活破壊を引き起こさないことだ。休校、イベント・外出自粛、操業停止…。これは「コロナ」によるわけではない。政治によるものだ。場当たり的な「経済支援」ではなく、市民の生活を守るものでなければならない。

「コロナ解雇」を放置

 「私が決断した。私の責任で万全の対策をとる」。2月29日、コロナ対策で初めて記者会見を開いた安倍晋三首相は大見得を切った。

 対策は3月10日にずれた。内容は保護者の休暇取得支援策として正規・非正規問わず日額上限8330円の助成、フリーランス日額上限4100円などを合わせ財政措置4300億円、金融措置1兆6千億円。

 だが、いずれも労働者を直接救済するものではないと不評を買った。休校に伴う保護者の休暇には別枠有給休暇を与えた使用者に助成する。自分で申請するフリーランスは半額以下。その理由は説明されない。

 雇用調整助成金の特例措置拡大も問題だ。使用者の都合で労働者を休ませる場合、賃金の一部を使用者に助成する制度だが、コロナ休業にも全業種で適用できることにした。中小企業の場合3分の2助成となるが、「緊急事態」を宣言した自治体(北海道)では5分の4に引き上げた。いかにも姑息な「緊急事態」誘導だ。

 そもそも休業手当自体、労働基準法第26条では平均給与の60%。使用者は雇用を維持するために3分の1を負担するぐらいなら、リストラを選ぶ。2月末、パート労働者に「給料払うから休んでいい」と言った不動産会社の社長は3月、「全部コロナのせいだからね」と解雇を告げた(3/11朝日)。コロナ解雇、雇い止めは後を絶たない。


デフレ不況を深刻化

 事態は「コロナ」のせいだけではない。そもそも日本経済は長期不況下にあった。19年10月〜12月のGDP(国内総生産)は年率換算マイナス7・1%。40兆円近くの縮小を意味する。10月の消費税率引き上げが消費需要をいっそう引き下げたことによる。

 デフレ不況は続いている。需要が減少し生産力が余剰となっているのだ。需要が増えなければ、余剰の生産力は淘汰(とうた)される。企業が倒産するか、経営者が雇用削減に走るか。これが資本主義の非情さだ。「コロナ自粛」はその引き金を引いた。

 安倍は3月19日の関係者からの「集中ヒアリング」で「V字回復できる政策をとる」と言った。本当にそうするには、消費税増税と「コロナ自粛」で凍り付いた消費需要を回復させなければならない。何よりも、休業、雇い止めによる労働者の収入減を直接補う措置が待ったなしで必要だ。

 どれほどの規模が必要か。例に挙がるリーマンショック時の給付金1万2千円(18歳以下、65歳以上2万円)では到底足りない。消費税率引き上げによる需要減を元に戻すには、減ったGDP40兆円の6割を個人消費が占めるとすれば、一律20万円が必要となる。「V字回復」というからには、それ以上の規模が必要となる。

 総額1兆j(約110兆円)の対策を表明している米トランプ政権に対しアメリカ民主主義的社会主義者(DSA)は、「企業利潤より市民生活を優先せよ」と要求を掲げている。「ウォールストリート(金融界)に巨額資金を投入できるのなら、学生ローンを免除し、住宅ローンや借金の返済を猶予せよ」と主張する。

 「コロナ危機は、資本主義がいかに不正義で、不平等で、人の痛みに無関心であるかを赤裸々に暴いた」(DSA)。日本でも全く同じだ。資本のためではない労働者・市民のための経済対策を取らせなければならない。

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