2020年04月03日 1619号

【たんぽぽのように(12) 新型コロナウイルス 韓国では 李真革】

 韓国では、ドライブスルー検査をはじめ、毎日2万件に及ぶPCR検査が迅速かつ広範囲に行われ、感染者数の増加傾向は鈍化した。とはいえ、3月21日時点で新型コロナウイルスによる死者は100人を超えた。小中高校の始業がすでに二度も延期された。学校に行けない学生・生徒たちとその家庭、そして社会のあちこちで人々の日常生活が脅かされている。

 景気低迷により零細自営業者、非正規労働者、障害者など社会的弱者たちは生存さえ危うい状況になっている。 11兆ウォン(約1兆円)規模の補正予算案が国会を通過したが、社会的弱者層の困難を解決するには全く足りない。企画財政部の官僚たちが財政健全性を理由に予算増額に反対したと言われ、全経連(経営者団体)はこの隙に規制緩和と減税を要求している。

 朴槿恵(パククネ)政権当時、マーズ(MERS)コロナウイルスの患者が発生した民間病院の収益が落ちるのを憂慮し、病院名を公開しないなど秘密主義を固守して被害が大きくなった。それと比べれば文在寅(ムンジェイン)政権の対応は透明性の面で改善された、と評価されている。しかし、専門家らは、公立病院と隔離病床の不足、専門人材の不足の問題を指摘する。また、公約を守らず、感染症対応のインフラを構築していないことについて反省せよと主張する。

 マスク供給不足問題では3月9日、「公的マスク5部制」(生まれ年を基準に曜日ごと5日に1回マスク2つを買える制度)が実施されたものの、十分ではない。この制度では、健康保険未加入や、未登録(「不法」滞在)、短期訪問の外国人などが排除されている。

 中国と中国人、新天地という新興宗教集団、大邱(テグ)と慶尚北道(キョンサンプクト)地域など特定集団へのヘイトスピーチがあちこちで起きている。感染者がいつ、どこで、誰と何をしたのか詳しく迅速に情報公開される状況の裏には、世界最高レベルで設置されているCCTV(監視カメラ)と国が必要な場合は国民のクレジットカード使用の詳細と携帯電話の位置追跡などを行える反人権的なシステムが存在する。

 今後どれほど多くの犠牲者が出るのかいまだわからないが、より大きな苦痛を経験する人々が誰なのかは明らかだ。日常的な不平等の中で、私たちは再び、人間とは何か、国家の責務は何かについて、真剣に答えなければならないだろう。

(市民活動家、京都在住)
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