2020年04月03日 1619号

【森友「自殺」職員の遺書が告発/公文書改ざんは財務省の指示/命を奪った安倍首相の嘘】

 学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる公文書の改ざん問題で、2年前に自殺した財務省近畿財務局職員が遺した文書を遺族が公開した。「改ざんはすべて佐川理財局長の指示」と告発する内容で、安倍晋三首相の虚偽答弁に端を発する組織犯罪の実態が赤裸々に綴られている。

現場の怒りと悔しさ

 「森友問題/佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰れもいわない/これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。/なんて世の中だ、手がふるえる、恐い/命 大切な命 終止府(原文ママ)」

 これは近畿財務局職員・赤木俊夫さん(享年54)が亡くなる直前に書いた「遺書」の一部分である。赤木さんは上司に強要され改ざんに携わった現場担当者の一人。朝日新聞の報道によって事実が明るみに出た5日後の2018年3月7日、自ら命を絶った。

 まじめな公務員がなぜ不法行為に加担し、死を選ぶまでに追い詰められたのか。赤木さんは改ざんの経緯を詳しく記した手記を遺していた。そこには改ざんの指示が佐川宣寿(のぶひさ)・理財局長(当時)から来たことや、主導した幹部職員の実名が綴られていた。

 「森友事案は、すべて本省の指示、本省が処理方針を決め、…嘘に嘘を重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです」「最後は逃げて近畿財務局の責任とするのでしょう。怖い無責任な組織です」

 検察の事情聴取を受けた赤木さんは「ぼくが何を言っても無理や。本省の指示なのに最終的には自分のせいにされる。ぼくは犯罪者や」と語っていたという(3/26週刊文春)。トカゲのしっぽ切りの絵を描いたのが財務省本省であることは言うまでもない。

 しかし、この問題で最も責任を問われるべきは安倍首相である。すべては首相の嘘を取り繕うために行われたことだからだ。

安倍の関与隠し

 「私や妻が関係していたということになれば、間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきりと申し上げておきたい」。2017年2月17日、森友疑惑への関与を国会で追及された安倍首相はこう言い切った。

 この首相発言以降、佐川局長は「不当な働き方かけは一切ない」「交渉記録はない」といった強気の国会答弁を連発するようになった。そして近畿財務局で決裁文書の改ざんが行われた。手記にあるように、最初は同年2月26日のことだった。本省の幹部が過剰に修正箇所を決め、改ざん範囲はどんどん広がったという。

 この改ざんで何が隠されたのか。一例をあげると、「特例承認の決裁文書」の元文書には、森友側の要請に冷淡だった近畿財務局が、学園と安倍昭恵・首相夫人の関係を認識するや態度を一変させ、特例契約への「協力」を申し出たことがしっかり書かれていた。

 また、森友学園の籠池泰典理事長(当時)が改憲・極右団体「日本会議」の地方役員であること、同会の国会議員懇談会の副会長は安倍首相、特別顧問は麻生太郎財務相であることなど、背景関係を説明する記述もあった。これらはすべて削除された。安倍夫妻の「関与」を消し去る意図があったことは明らかだ。

今こそ徹底追及を

 手記によると、本省から近畿財務局に出向していた幹部職員は、改ざんを悪いこととも思わず「あっけらかんと修正作業を行い、差し替えを行った」という。安倍忖度(そんたく)が日常と化した官僚機構の堕落を物語る。

 もう一つ注目したいのは、「大阪地検特捜部はこの事実関係をすべて知っています」というくだりである。森友問題では、虚偽公文書作成の疑いで佐川局長ら財務省幹部が刑事告発されたものの、全員が不起訴処分となった。8億円を値引きした背任の容疑で告発されていた近畿財務局の担当者も不起訴となった。

 この幕引きに暗躍したのが、当時は法務省事務次官だった黒川弘務(東京高検検事長)である。「定年延長」という奇策を使い、安倍政権が次期検事総長に据えようとしている官邸べったり官僚だ。すべてはつながっているのである。

  *  *  *

 赤木さんの妻は3月18日、国と佐川元局長に損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。「夫の死の真相を知りたい」との願いからである。だが、安倍首相は手記を読んだと明らかにした上で、再調査には否定的な考えを示した(3/19参院総務委員会)。麻生財務相も問題は決着済みと強調した。

 おそらくは「コロナの件に紛れてごまかせる」と思っているのだろう。卑劣な逃げ切り策動を許してはならない。
     (M)

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS