2020年04月10日 1620号

【コロナ感染 五輪延期も改憲に利用/命も安全も無視 カネまみれのオリンピックもろとも安倍退陣だ】

 新型コロナウィルス感染の世界的拡大で、7月開催予定だった東京五輪の「1年程度延期」が決まった。安倍政権は、延期開催を自らの改憲策動に利用することを狙う。東京五輪はそもそもの経緯からも延期ではなく中止だ。市民の命もアスリートの健康も顧みない安倍は退陣以外にない。

カネとウソで招致

 2020年夏季五輪招致に当たって、IOC(国際五輪委員会)が2012年5月に実施した世論調査では、候補地となっていたマドリード、イスタンブール、東京の3都市のうち、住民の招致「賛成」はマドリード78%、イスタンブール73%に対し東京は47%。東京が開催地となった場合に懸念すべき点として、IOCが国内の「熱気不足」を指摘していたほどだ。

 世論の支持も少ない東京が開催地になったのは、日本政府が招致をカネで買ったからだ。事実、東京の招致委がIOC委員の買収に2億円をばらまいた疑惑が浮上。竹田恒和JOC(日本五輪委)会長は辞任に追い込まれた。カネをかけずコンパクト五輪を目指すとの宣伝も口だけで、すでに3兆円が投じられた。文字通りカネまみれ五輪だ。

 招致の際、安倍首相は「福島の汚染水は完全にコントロールされている」と大ウソをついた。実際はどうか。市民団体が今年3月に行った土壌汚染調査では、聖火リレー通過予定の21調査地点のうち3分の1がチェルノブイリにおける「避難の権利」ゾーンに該当した。除染が必要な地点は3分の2に達している。

延期でなく中止だ

 WHO(世界保健機関)が「パンデミック」を宣言、東京五輪中止への内外世論の前に、安倍とIOC、それに連なるグローバル資本は、中止に伴う政治的打撃と巨額の損害を避けようと延期を画策。3月24日「1年程度」の延期を発表した。

 だが感染は、欧米では爆発的拡大の一途、対処が容易ではない「途上国」にも広がる。1年程度で収束が見込める展望はない。

 聖火リレーが走る予定の福島県浜通り地域は大部分が帰還困難区域のままだ。2月29日には、ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)などによる聖火リレーへの抗議デモが出発予定地のJヴィレッジで行われた。ひだんれんの大河原さき事務局長は「県民4万人が避難する実態を世界から覆い隠す五輪はやめるべきだ」ときっぱりと言い切る。

日本社会の底抜ける

 カネとウソによる五輪招致決定は2013年、第2次安倍政権誕生1年目。以降、アベ政治のウソ、隠ぺい、改ざんと国家の私物化、腐敗は底なしになっていく。

 野党の質問にはまともに答えず、平然とウソを垂れ流す。首相答弁に合わせて公文書が廃棄・改ざんされることは日常風景になった。森友事件で公文書改ざんを強要され自死に追い込まれた近畿財務局職員の遺書が公表されても、国会では麻生らとせせら笑い、再調査はあくまで拒否する。

 新型コロナ感染の広がりに、安倍は五輪開催を最優先し、感染をむしろ拡大させた。クルーズ船でのでたらめな隔離は乗客乗員の感染を深刻化させた上、WHOに求めて日本の感染者数から除外させた。全国の市民や医師らが求めるウイルス検査も拒否し、感染の実態を隠し続けたのだ。

「コロナ克服」で改憲?!

 五輪延期開催に安倍は改憲への野望を託している。コロナ危機には「緊急事態宣言」で非常時―人権破壊への抵抗感を薄れさせ、「コロナ克服五輪」開催で「実績」をアピール。一気に自身の自民党総裁4選と改憲発議へなだれ込む。安倍の基本戦略はすでに見え隠れしている。

 世界の目を欺き、史上最も危険な「カネ、ウソ、放射能、コロナまみれ五輪」を、自身の延命と改憲への地ならしに利用する醜悪きわまる安倍政権。五輪もろとも葬り去ることが必要だ。



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