2020年04月10日 1620号

【福島県の避難者追い出し提訴糾弾 人権無視 行政の責任を放棄】

 福島県は3月25日、東京の国家公務員住宅に入居する避難者4世帯に対し、明け渡しを求める訴訟を福島地方裁判所に起こした。新型コロナウイルス騒動最中のどさくさに紛れた暴挙だ。しかも、福島地裁で提訴し、避難当事者を福島市まで呼び出そうとする、実質上意見陳述する機会をも奪う人権無視の姿勢である。

 区域外避難者に対する唯一の損害補償ともいえる住宅無償提供が打ち切られて3年。引っ越しのできない世帯は、9年経って貯蓄も底をつき、年齢や病気のために非正規・アルバイトの低収入しか見込めないなど、個々の事情のある世帯だ。これに対し、公営住宅提供や低家賃の賃貸住宅提供など現実的な住宅補償を行うこともなく、強制退去の方針に踏み切ったことに強く抗議する。

 県外避難者の住宅明け渡しを巡っては、山形県の雇用促進住宅入居者に対し民間企業が訴えた例はあるが、行政である福島県が行うのは初めてのケースとなる。避難者に対する行政の責任放棄である。

 福島原発事故を教訓に、自然災害対応の災害救助法ではなく、放射能被ばくから健康を守る遠方への避難・長期間の避難を保障する法律・制度の確立こそ問われている。新たな法ができるまで、運用や準用で、“一人も路頭に迷わせない”手を打つことこそ行政に問われていることだ。あろうことか、その行政が避難者を経済的に精神的に追い込んでいる。絶対に許してはならない。

 当事者の一人は「私は、都営住宅なら何とか生活していけると応募しているが、10回落選している。高齢で精神科にも通院し職は安定しない。せめて引っ越し先が定まるまで、とあくまで話し合いを求めてきたのに」と悔しさをにじませた。

ひだんれんが抗議要請

 3月27日には、ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)が緊急に福島県に対する抗議要請行動にとり組んだ。県庁内で記者会見し、(1)国家公務員宿舎入居者に対する「2倍家賃の損害金」請求をやめること(2)国家公務員宿舎入居者に対する立ち退き提訴をやめること(3)帰還困難区域からの避難者の住宅提供打ち切り通告を撤回し、すべての避難当事者の意向と生活実態に添った住宅確保を保障すること(4)みなし民間賃貸住宅の家主に対し被災者への立ち退き要求・損害金請求を行わないよう要請することを訴えた。

 避難者を励まし、追い出し訴訟への反訴と2倍請求撤回訴訟をともに闘い、人権を取り戻し、避難の権利・国内避難民の居住権を実現していこう。

 
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