2020年04月10日 1620号

【最高裁が沖縄県の訴えを棄却/辺野古新基地阻止は正念場だ】

 辺野古新基地建設阻止の闘いは、文字通り正念場に入った。

 3月26日、最高裁判所は、沖縄県の埋め立て承認撤回についての国土交通相による取り消し裁決を「違法な国の関与」として県が訴えた「国の関与取り消し」訴訟で、口頭弁論も開かず上告を棄却。訴えを退けた。

「国策」忖度の不当判決

 県は2018年8月、埋め立て予定海域に軟弱地盤が見つかったことなどを理由に、沖縄防衛局による辺野古崎沿岸の埋め立ての承認(13年12月)を撤回した。これに対し沖縄防衛局は、行政不服審査法に基づく審査請求を当時の石井啓一国交相に申し立て、19年4月国交相は撤回を取り消す裁決を行った。

 行政不服審査法は本来、国など公権力の不当な処分に対して市民の権利救済をを保障するもの。制度を濫用し、内閣の一員が同じ内閣の身内に裁決を求めること自体茶番劇だ。にもかかわらずこの何の正当性もない裁決について、福岡高裁那覇支部判決(19年10月)に続き、最高裁も「違法性はない」とした。またも安倍政権の「国策」を司法が忖度(そんたく)した不当判決だ。

 安倍政権は14年5月、内閣官房の中に内閣人事局を設置。官僚の人事とともに、全国の裁判所判事の昇格・異動、判決内容にもかかわる最高裁事務総長の人事にまで強い影響力を行使している。政府の決定はすべて正しいとする裁判官ばかりという司法の趨勢(すうせい)は加速した。異を唱えれば左遷や降格しか道がないからだ。三権分立は実質的になくなっている。

設計変更の攻防

 4月には、沖縄防衛局から県に軟弱地盤の改良工事など「設計概要変更申請」が提出される。辺野古阻止を掲げる玉城デニー知事は、不承認もしくは判断を留保する可能性が高い。

 これに対し政府は、公有水面埋立法を所管する国交相が県に是正勧告や指示を出す。県が従わない場合は、国交相が不作為の違法確認訴訟で県を提訴することが想定される。一方、県が国交相の是正勧告や指示を国の違法な関与として国地方係争処理委員会に申し立て、係争委の結論が納得いかない場合、国交相を相手に関与取り消し訴訟を提起するという流れもある。

 いずれにしても、現在の裁判所や係争委では、安倍政権に忖度した判決、裁決となる公算がきわめて大きい。2020年、埋め立てをめぐって司法の場で正義を求めるのは困難な状況だ。まさに正念場の1年となる。

 こうした流れを見越し、沖縄防衛局は埋め立てをスピードアップさせる手をうってくる。


工期短縮を画策

 予想される設計概要の変更申請では、埋め立て方法について、護岸を閉じた後に土砂を投入する基本方針を改め、閉じる前に土砂投入する。汚濁した海水の拡散によって環境破壊は一気に進む。地盤改良面積も73万平方bから66万平方bに縮小し、地盤改良のための砂杭7万7千本を7万1千本に削減。内2万4千本を植物などを材料とする「ペーパードレーン工法」に変更する。これにより、入手が困難であった砂の量を650万立方bから350万立方bに減らすつもりだ(3/16沖縄タイムス)。要は、工期短縮へ環境保全を度外視しても一気呵成(かせい)にやれ≠ェ官邸からの号令だ。

 現在辺野古への土砂搬出を行っている名護市安和(あわ)の琉球セメント旧桟橋は3月末で使用期限切れを迎える。4月以降も使用できるよう県への申請が出され、本部町・塩川港の港湾施設内にベルトコンベアを設置する申請も出された。許可をめぐる緊迫が続く。

 政府・自民党は、埋め立て工事の既成事実を積み上げながら、2か月後6月7日投開票の県議選で与野党逆転を狙い、あらゆる手を使って玉城県政を倒そうと画策している。現地の闘い、全国の連帯を強め、この県議選に必ず勝利しなければならない。   (N)

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