2020年04月10日 1620号

【ILOとユネスコの合同専門家委員会へ なかまユニオンがジュネーブで直接要請 国際基準違反を訴え】

 なかまユニオンは2006年以来、教育労働者への差別や「日の丸・君が代」処分について、ILO(国際労働機関)とユネスコがつくる「教職員勧告適用合同専門家委員会(CEART〈セアート〉)」に対し、日本の教育行政がどれほど国際基準からかけ離れた不当なものかを訴えてきた。昨年3〜4月、政府に是正勧告が出されたことを受け、8人の組合員らがスイス・ジュネーブのILO本部に向かった。(7面に関連記事)

 3月15日、新型コロナ感染者数が日に日に増加する中、国連から面談中止指示が出される。予定されたCEARTのオリバー・リャンさんとの直接要請は困難となった。最終的に、参加者はジュネーブでテレビ会議形式による要請を行った。

 要請には、「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク グループZAZAの被処分者2人も参加した。

 その一人松田幹雄さんは、「君が代」不起立・不斉唱を理由とした懲戒処分の手続きにおいて、調査と審議の場であるはずの大阪市人事監察委員会が教員の上申書の内容を一切検討せず、会議の議事録もメモもないという実態を述べ、ILO―ユネスコ「教員の地位勧告」の精神を蔑(ないがし)ろにしていることを強調。もう一人の山口広さんも、教育委員会が、組合が求める勤務労働条件や教育内容にかかわる交渉をすべて「管理運営事項」としてはねのけてきた事実を事例をあげて訴えた。

政府の勧告無視に抗して

 この直接要請行動に至ったのは、昨年、「教員の地位に関する勧告」の適用に関するCEART第13回最終報告が出され、その中で日本政府に以下の勧告が行われたことからだ。

 ▽CEARTは、社会対話を育成し教師の組織を巻き込むために、将来の立法または政策改革の機会をつかむよう日本政府に奨励する。

 ▽教員の役割、資格および専門知識は、正式かつ効果的に認識されるべきであり、教科書の選考過程および決定過程で実質的な参加形態をとるべきである。

 ▽勧告の原則が適用され促進されることを確実にするために地方自治体と適切なガイダンスを共有すること。

 ▽教員団体との協議と交渉に関する持続する課題について合同委員会の以前の勧告をさらに検討すること。

 しかし、勧告が出され1年が経過しても、日本政府は勧告の内容について一切履行せず、地方教育委員会には共有すらしていない。また、大阪市教委に教員の勤務労働条件に関わることについての交渉を数多く求め続けてきたが、市側は「管理運営事項」については協議・交渉を行ってはならないと条例を盾に拒否し続けている。この状況に対して、教職員なかまユニオンは昨年9月、12月の2度にわたってCEARTに追加申し立てを行った。今回の直接要請は、これらの申し立てを補足説明するためのものだ。

流れは大きく一つに

 8人が日本から出向いて直接訴えた熱意は伝わったのではないか。担当のオリバーさんから「2021年10月には結論を出したいので、早速日本政府に見解を求める作業に入る」と言っていただいた。

 CEARTへの申し立て行動は十数年にわたる取り組みになっている。日本政府への度重なる勧告により、日本の教育行政が国際基準から大きく遅れている事実を世界各国が認識する状況にもなっている。

 3月25日、2009年に「君が代」不起立への6か月停職処分を受けた根津公子さんの処分取り消し訴訟控訴審は逆転勝訴となった。この前進も、CEART勧告も、共通する一つの流れになっているように思う。日本政府は国際基準へと舵を切らなければならないところに来ている。

(なかまユニオン学校教職員支部・東田晴弘)



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