2020年04月10日 1620号

【国際自動車裁判で最高裁勝訴 残業代未払いは労基法を逸脱 苦しんでいる労働者に力】

 「やったー」―3月30日、最高裁前は勝利判決に沸いた。タクシー大手の国際自動車を相手に未払い残業代の支払いを求め2012年5月東京地裁に提訴(第1次、第2次は14年10月)して8年。判決は、未払いは労働基準法の逸脱として18年高裁不当判決を取り消し、高裁への差し戻しを決定した。

100%認められた

 午後4時過ぎ、最高裁前で待ち構えた支援者らを前に“勝訴”の垂れ幕が掲げられると、「おー」「よしっ」と歓声が上がり拍手がわく。「絶対勝つとは思っていたが、内心ドキドキしていた」と言う弁護団の指宿(いぶすき)昭一弁護士は「最高裁、勝利判決でした」と第一声。「労基法第37条が定めるお金が支払われたとは認められないとし、我々の主張が100%認められた」。全国際自動車労働組合・伊藤博委員長が発言を促される。「(うれしくて)泣きそう。泣いちゃうからしゃべりたくない」と絶句。喜びに胸を詰まらせた。

 参加した原告は、長年の労苦を吹き飛ばすように弁護団・支援者とともに満開の桜を背景にガッツポーズで勝利の喜びを示した。

 記者会見した指宿弁護士によると、次のように評価した。判決は、▽割増金の名目で支払われている中に、一部は時間外労働の対価も入っているだろうが、歩合給も相当程度入っている▽どの部分が通常の労働時間の対価でどの部分が37条にあたるものなのかの判別ができないから割増賃金が支払われているとは言えない、としている。労基法の労働時間規制は労働法制の根幹部分であり、重要な争点だった。

 指宿弁護士は「残業代未払いを認めながら不払いを争うケースはあるが、本件は形式的には残業代も支払っている仕組みになっていた。これが容認されれば労基法37条が骨抜きとなり、タクシー業界だけでなく日本の労働者全体に影響を及ぼす。その意味でよい判例ができたと思う」と述べた。

他の労働者も救われる

 伊藤委員長は「会社は長年にわたり乗務員をだまし続けてきた。また、賃金計算法に合意した国際労働組合(多数派組合)の責任も重大。乗務員に与えた不利益の責任を取るべきだ。最高裁は生きていたなと思う。判決によって、残業代未払いの他の労働者も救われる。苦しんでいる日本の労働者の手助けをしたい」と判決を評価した。

 支援してきた首都圏なかまユニオンからは「ひどい賃金制度を認めて労働者をごまかしてきた労働組合は許せない。日本には残業代未払いの労働者がたくさんいる。この判決を使ってともに勝ち取りたい」(石川正志さん)「8時間働いて当たり前の生活ができるのが本来の姿ではないか。37条は労働者の残業を規制する趣旨もあり、これを機に長時間労働をさせない社会に近づけたい」(伴幸生委員長)と決意が語られた。

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