2020年04月17日 1621号

【「コロナ」拡大で解雇 雇い止め続出/生きるための現金給付を/これが世界の常識だ】

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、派遣、契約社員など非正規労働者が更新されず雇い止めされるケースが続出している。

 厚生労働省は3月31日、新型コロナを理由に解雇や雇い止めされる人が1021人に及ぶ見通しを公表した。全国のハローワークなどに寄せられた情報をまとめた数字で、実際ははるかに大規模になると考えられる。今春卒業者の感染拡大による内定取り消し数は、31日現在で23社58人となるとも公表。氷山の一角だ。

 感染拡大は、観光バス会社、ホテル、飲食店等に対して大きな経済的損失を与え、すでに多くの労働者が解雇や雇い止めされている。

 続いて、自動車大手8社が国内工場の操業を一部、または全部を止めることになった。大手メーカーには下請け部品会社が連なり、生産停止の影響は大きい。工場が立地する地域全体にも影響が及ぶ。

 4〜5月、大量の派遣労働者の雇い止め=解雇と住居喪失の危機的状況が予想される。命と雇用を守るためにユニオンに結集して闘うことが求められる。

欧米の労働者支援策

 感染者数・死者数が急増する米国では、3月第4週(22〜28日)の失業保険の申請件数が660万件以上。前の第3週(15〜21日)と合わせ、2週間の失業者数は約1千万人となった。これは2008年リーマンショック時を上回る。

 米国では3月27日、過去最大の2兆ドル(約220兆円)規模の景気刺激策法案が成立した。もちろんグローバル企業への巨額投入もあるが、新型コロナの影響を受けている世帯などへの直接給付の経済支援や失業保険の強化が可能となる。解雇ではなく、一時的な休職状態にある人など、通常は失業保険の対象とならない人も支援を受けられるという。また米国には雇用を維持する企業に国が援助する前例はないが、今回雇用維持を条件に6月末まで給与支払いを肩代わりする。

 英政府は、休業を余儀なくされる企業に勤める労働者に1人月額2500ポンド(約32万円)を上限に賃金の8割を支給する。企業規模や営利、非営利を問わない。当面は3か月間をメドにするが、状況に応じて延長し、予算枠は設けず必要分を肩代わりするとされる。スナック財務相は、新制度について「歴史上初めて、政府が賃金支援に踏み込む」と話す。労働党は、短時間雇用や新入社員らの制度からの除外を批判し、さらに徹底を求めている。

 デンマークやオランダもイギリス同様、自宅にとどまる労働者にその家計を救う資金を支払う。

 カナダでは、820億カナダドル(約6兆1300億円)の財政支援策を発表。▽児童手当の支払いの一時的な増額▽自宅にとどまる必要があり有給休暇を取得できないか雇用保険未加入の労働者を対象とした最大900ドル(隔週で最長15週間まで)の新緊急医療給付▽6か月間の学生ローンの返済猶予(無利子)▽ホームレスケアプログラムの倍増などに充てられる。

 これが国際水準だ。


数か月先では遅い

 ところが安倍政権はどうか。職を失う非正規労働者が日々増えているのに、企業への雇用調整助成金を繰り返すばかりで、当事者に支援が行われるかも定かでない。また、4月3日「所得減少世帯に30万円支給」と報じられたが、そもそもこの対策は解雇・雇い止めされた労働者を対象としたものではない。

 新型コロナ感染拡大の影響を受けるすべての労働者・市民に直接の資金支援を行わせなければならない。生きるためのお金が入るのが数か月先では間に合わない。ただちに現金が渡る対策を打ち出すべきだ。

 
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