2020年04月17日 1621号

【コラム見・聞・感/新型コロナが浮き彫りにした北海道の現実】

 北海道を訪れる外国人観光客は最近は年間300万人に達し、外国人観光客全体の1割を占める。感染が拡大した2月に雪まつりを中止しなかった札幌市に疑念が向けられている。

 筆者は3・11も福島県で経験している。行政の対策はどうせ後手に回ると思ったので、雪まつりは短時間、様子を見に行ったものの、換気の悪いプレハブの休憩所に入るのは絶対にやめたほうがいいと思って避けた。2月16日、札幌で某歌手のコンサートに行く予定でチケットも買っていたが、会場では大勢が集合し、大声を出しながら飛沫を飛ばす。ドライアイス等による演出効果を高めるため換気の悪い設計にしている会場もある。もってのほかだと考え取りやめた。鈴木直道知事による非常事態宣言よりも前だ。この判断は正しかったと思う。

 札幌よりも北見市、中富良野町など地方で感染者の比率が高くなった背景に、地方における「医療崩壊」があるのではないか。厚労省は昨年、地方を中心に病院を名指しして再編統合を促したが、現状でも満足な医療体制のない地域は道内至るところにある。例えば筆者が一昨年まで生活していた新ひだか町では、心臓の緊急手術ができるのは町立病院1か所のみ。職場の仲間が仕事中に心筋梗塞で倒れたときは最悪の事態も覚悟した(その後幸運にも職場復帰できたが)。産婦人科はなく、町民は苫小牧や札幌の病院での出産を強いられている。地元で出産もできない町は、いずれ地図から消えるだろう。

 木古内町国保病院院長は「民間病院が進出できないような地域で良質の医療を提供するのが公立病院の役割。採算性ありきではない」と国の病院再編論議に疑問を投げかける。病院を、入院を取り扱わない診療所に格下げし、何とか医療を確保している地域もある。

 炭鉱閉山後、過疎化が極限まで進んだ赤平市。市立病院の業務のうち医療資格がなくても可能な給食調理、衣類の洗濯などをボランティアの市民が担う。最高齢はなんと92歳。病院を残したいとの強い思いがボランティアを支える。

 こうしたやり方にはもちろん賛否両論あろう。だが、国の関与をどうするか議論している間に現場は差し迫っている。毎日が生きるか死ぬかの瀬戸際だ。新型コロナウィルスの大流行が北海道から始まったのは必然としか思えない。

     (水樹平和)
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