2020年04月24日 1622号

【休業迫るコロナ緊急事態宣言/経済対策「108兆円」に補償なし/市民に犠牲強いる無責任政権】

 安倍政権が4月7日に出した新型インフルエンザ等特別措置法(特措法)に基づく緊急事態宣言。当面、5月6日までの29日間だが、対象となった東京都など7都府県以外の自治体からも指定の声が上がる。しかし、この宣言で市民の命と生活は守られるはずがない。全く信用に値しない安倍政権が何をやらかしているのか検証する。

脅し文句「緊急事態」

 緊急事態宣言の対象地域にならなかった愛知県などが指定を求めている。市民に与える「危機の切実さが違う」のだという。しかし、宣言自体に感染防止効果があるわけではない。実際どんな法的効果が生まれるのか、確認しておく。

 緊急事態宣言とは、「新型インフルエンザ等が全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼす」事態が発生したと政府対策本部長(内閣総理大臣)が認め、緊急事態措置を行う期間、区域と事態の概要を公示することだ(特措法第32条)。

 この下で特定都道府県知事がとれる措置は、住民への外出自粛、施設使用制限などへの協力要請・指示など(第45条)だ。東京都小池百合子知事は、休業要請の根拠を第45条(特定都道府県知事)と第24条(都道府県対策本部長の権限)で使い分けた。第24条の要請は宣言の対象区域でなくても、どの知事にもできる。政府は宣言後、7都府県以外の自治体に対しても夜の飲み屋の休業を言い出した。「宣言によって要請の法的根拠ができる」とするのは正確ではない。

 問題は宣言の有無ではない。「休業要請」に市民の協力をどう取り付けるかだ。誰しも、感染を望まないし、感染源になろうとも思わない。「休むに休めない」事情がある。生活保障、休業補償がなければ「自粛」はできないのが現実だ。

 全国知事会は4月8日、政府に「休業補償」を求めたが、特措法担当の西村康稔(やすとし)経済再生担当大臣は補償を拒否したうえに、休業要請を2週間見送るよう求めた。「緊急事態だ」と脅すだけで、様子を見よと言うことだ。

 一体、政府の「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」は何なのか。「収入減少世帯に30万円」などを含んではいるものの、この経済対策は「緊急事態宣言」による措置とは関係ない代物だ。

水増しの見せ金

 「事業規模はGDP(国民総生産)の2割108兆円」と安倍晋三首相が胸を張る経済対策。2つのフェーズに分けて対策をあげている。感染収束前の「緊急支援フェーズ」(5本柱の1・2)と感染収束後の「V字回復フェーズ」(同3・4・5)。なんと「コロナ危機」後をにらんだ景気対策まで含めた見せ金だった。

 108兆円の中身を見てほしい(表)。政府の財政支出は25兆円20年度補正予算は特別会計合わせて18・6兆円に過ぎない。しかも昨年12月5日に策定された「安心と成長の未来を拓く経済対策」未執行分6・4兆円まで含んでいる。

 「V字回復フェーズ」はコロナ以前、消費税増税不況に対する支援策だった。「海外需要創出等支援・輸出環境整備緊急対策」「ポスト5G情報通信システム基盤強化対策」など、コロナ対策としてよくもこんな項目を挙げられたものだ。

 「緊急支援フェーズ」はどうか。「感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬開発」。これぞコロナ対策といえる項目なのだが、中身を見て、がく然とする。「アベノマスク」(1世帯2枚の布製マスク配布)466億円をはじめ怪しい項目が並んでいる。

 ワクチン開発では、「アビガン」の増産、200万人分の備蓄(額不明)をめざす。この薬は動物実験で「奇形」が生まれた欠陥品。売れない薬が増産に転じるのは、製造会社が安倍と親しい古森(こもり)重隆が会長を務める富士フィルムホールディングスの子会社だからだ。

 感染軽症者の受け入れを表明したアパホテル。代表元谷外志雄も強力な「安倍友」だ。「国難に協力」と慈善精神をアピールしているが、客の減少に苦しむホテルにとっては渡りに船。「総理がホテルに電話し、直談判」(御用ジャーナリスト田崎史郎)と手柄扱いにあきれてしまう。

 他にも見過ごせないのは内閣府の戦略的広報費100億円。「日本の信認を高める国際広報」との名目で海外メディア対策を行おうというのだ。安倍政権のコロナ対策は海外のマスコミからさんざん批判されている。「(アベノマスク)エイプリルフールか」とまで酷評された。外務省も「ネガティブな対日意識の払拭」と24億円を計上している。

 これが「コロナ緊急経済対策108兆円」の中身だ。政権維持のための広報費に代表されるように、安倍は市民の命も生活も守る気はない。安倍友への利益誘導は行っても、休業補償は1円も積まないのだ。

感染対策 民主主義貫く

 市民の行動は原則自由である。法によらねば制約されない。一方、行政権力は原則不自由。法に定めがないことはできない。これが法治主義の原則だ。だが特措法に「罰則規定」はないとはいえ、感染防止を自発的に行うのは当然だ。

 この場合、合理的判断ができる正確な情報が必要である。たとえば「3蜜」。コロナ感染は主に飛沫感染や接触感染と言われ、密閉空間をさけ、社会的距離(2b程度)をとることに一定の合理性はある。決して思考停止し、権力に「強制力」を求めてはならない。主権者である市民が決定権を持つことが民主主義の根幹だからだ。

 だが一方で、損失を被る行動はとらないのも当然だ。市民・事業者の合理的な行動を保障することが政府のすべきことだ。100%の休業補償を速やかに実施せよ。これが、コロナ後も一層新自由主義政策を進めさせるのか、格差解消、市民の命と生活を守る政策に転じさせるのかを決めることにもなる(4月12日)。





 
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