2020年04月24日 1622号

【ミリタリーウオッチング イージス・アショア 民意無視、ずさんの極み 1兆円はコロナ対策に回せ】

 地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」2基の導入を政府が決定したのは2017年12月。翌18年6月、政府は東日本では秋田市の「陸上自衛隊新屋(あらや)演習場」、西日本では山口県萩市・阿武(あぶ)町をまたぐ「陸自むつみ演習場」の2か所を配備候補地の「適地」と発表した。

 19年6月、防衛省はまず秋田市で住民説明会を開く。

 提出された調査報告書には誤りがあった。防衛省の担当官がグーグルアースを使って複数の候補地を検討した際、横軸と縦軸の縮尺に違いがあるのに気づかず山の仰角を過大評価したという。結果的に、新屋演習場が「唯一の適地」として残る。プロの担当官がこんなずさんな調査・分析をしていること自体、不可解。

 また、多くの住民が不安に感じているレーダー波の影響だが、イージス・アショアのレーダーはいまだ開発中で存在しない。防衛省が実測調査したのは、まったく別の対空ミサイルのレーダーだった。住民説明会で防衛省職員が居眠りし市民の強い怒りを買った。当然である。佐竹秋田県知事も「話は振り出しに戻った」と批判した。

 このようなずさんな調査や対応の連続で、秋田では19年7月参院選でイージス・アショア導入に反対した野党候補が当選した。

 一方、山口では候補地そばの阿武町で「むつみ演習場へのイージス・アショア配備に反対する阿武町民の会」が昨年2月発足。有権者の過半数が加入している。

 今年1月13日、河野防衛大臣はハワイ州カウアイ島にあるイージス・アショア・ミサイル防衛試験施設を視察。レーダーによる人体や機器への影響がないか、以前から懸念されている。河野は「問題なし」という説明を受けたとされるものの、詳細は公開されていない。この施設にはイージスシステム用多機能レーダーSPY―1があるが、導入する新しいイージス・アショアには探知距離や精度を大幅に向上させたSPY―7レーダーが組み込まれることになっている。

800億円が1兆円に

 費用は、防衛省は当初1基当たりの取得費を800億円と試算していた。ところが、17年12月に1000億円、18年には1340億円に修正。30年間の維持・運用費で2基1945億円が加わり、その他の費用も含め総額は1兆円近くになると指摘されている。しかも最近増えている短距離ミサイルに対しては迎撃が困難。実に馬鹿げた装備なのだ。そんな金は新型コロナ対策に使えと言いたくなる。

 イージス・アショアを配備させない闘いを今、市民の力で広げる時だ。

藤田なぎ
平和と生活をむすぶ会

 
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